内容説明
理性偏重の啓蒙主義への反発から、18世紀末、ヨーロッパで感情を重視するロマン主義運動が興隆した。その先陣を切ったドイツロマン派は、不合理なものを尊び、豊かな想像力を駆使して、怪奇幻想の物語を数多く紡ぎだした。本書はそんなドイツロマン派の作品群の中から、ティーク「金髪のエックベルト」、コンテッサ「死の天使」、フケー「絞首台の小男」、アルニム「世襲領主たち」、ホフマン「砂男」など選りすぐった9篇を収録。不条理な運命に翻弄され、底知れぬ妄想と狂気と正気の狭間でもがき苦しむ主人公たちの姿を描く、珠玉の作品集。/【目次】ルートヴィヒ・ティーク「金髪のエックベルト」/ルートヴィヒ・ティーク「ルーネンベルク」/K・W・ザリーツェ=コンテッサ「死の天使」/K・W・ザリーツェ=コンテッサ「宝探し」/フリードリヒ・ド・ラ・モット・フケー「絞首台の小男」/ヴィルヘルム・ハウフ「幽霊船の話」/アヒム・フォン・アルニム「世襲領主たち」/E・T・A・ホフマン「からくり人形」/E・T・A・ホフマン「砂男」/訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
54
不条理な運命に陥り破滅していった者たちを描いた作品集。「金髪のエッグベルト」は既読。ゴシックっぽい雰囲気もある「ルーネンベルク」、とにかく不気味な「絞首台の小男」、ドリーブ作曲のバレエ「コッペリア」の原作で読みたかっ「砂男」。2025/02/07
翠埜もぐら
24
慣れ親しんだ英国の小説よりだいぶ堅苦しい感じではありますが、この辺はお国柄かしら。1,800年代前半ってこんな雰囲気ではありますね。アヒム・フォン・アルニム「世襲領主たち」は、夢見る青年領主の出現で一気に現と夢の境が無くなり混沌として不条理世界だぁと思ったのですが、うまい事後を継いだ従兄殿の後の世知辛い人生がなんか哀れだった。K・W・ザリーツェ=コンテッサ「宝探し」は、とても忙しいコメディ調の宝探しかと思っていたけど、全部求婚者のヴァーリング氏の掌の上だったと言うことかしら。お若いのに末恐ろしいわぁ。2024/09/29
Porco
17
ドイツのロマン派幻想小説9篇による短編集。お国柄が強く出ているのか、同じ西洋の怪奇小説の有名どころと言えばなイギリスのものより、どの話も少々固く理論的な印象を受ける。グリム童話ゆかりの地シュヴァルツヴァルトの暗い森からインスパイアされたのか、所々深い森への恐怖が散見されたのもドイツの作品らしい。2024/10/20
ひーじー
15
3/5 18世紀末から19世紀初頭までの、ロマン主義時代のドイツ怪奇譚集。といっても、ゾッとするような怖さは感じませんでした。なんというか、とりとめのない悪夢を起承転結もなく延々と見せられてる感じ。さすがグリム童話の国と思わせる点も多々ありますが、たとえば英国のゴシックホラーなどとは全く違います(まあ時代も違いますが)。あと「世襲領主たち」は、幻想的すぎて途中でギブアップしちゃいました^^; 2024/11/01
ハルト
10
読了:◎ まさに不条理、まさに幻想といった、ドイツ・ロマン派の物語たち。名高い「砂男」を始め、「金髪のエッグベルト」「絞首台の小男」が、中でもお気に入りだった。でもどれもおもしろかった。正気と狂気に惑わされながら、その踊るさまを憫笑し愉しむ魔の姿が見えてくる。不幸の暗雲から逃れられずに奈落へと落ちる登場人物たちの姿はむごく悲劇的だ。彼らへの哀れみによってよりおぞましさが増す。またこのシリーズで作品を読んでみたい。2025/01/26