内容説明
うつ病が世界的な流行をみせている。この流行はなぜおきたのか。北米と比較しながら、日本の「うつ」の過去・現在・未来を透徹。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
84
うつ病を医療人類学からひも解く本。うつが医療でどう扱われてきたのかという歴史に始まり、うつのジェンダー差や労働科学の視点から、社会的なストレスの病として位置づけられた“医療のうつ化”への深い洞察がある。それは、「過労自殺の裁判を通じて、うつ病概念が『ストレスの病』として世間に広く認知され、個人(のバイオロジカルな問題)を超えた社会的病として捉えられたことが、日本において、うつと自殺の医療化を促進することにつながった」という指摘だ。ここには、うつ=ストレスという単純化されたうつ病観に再考を促すものがある。2023/11/30
タナカ電子出版
27
物語以外の本を大きく3つに分類するなら✨体験本 分析本 信念本 と私はタイプ分類していつも本を読んでいる📚この本は現代世界を医療 公衆衛生的視点からの 分析本です。分析本の特徴とは…主観的 データ統計的に片よるため 解答なし 注意を促すにとどまります。このような本はインテリア医学マニアにおすすめしたいと思います。🧠2019/05/26
ステビア
13
精神医学における社会・文化的要因の重要さ。2017/03/12
pinoo
12
面白かった。かつては日本でも鬱の診断が異常者の烙印を意味し社会的に排除されたが、今は異常というよりは「誰でもかかるストレスの病」、また「社会病理」等と捉えられている。本著では、文献資料の整理と参与観察に基づく記述によって、鬱を巡る言説が人文⇔社会⇔医学的領域での議論を行き来しながら形成された過程が明快に論じられる。精神疾患はその「原因」を特定するのも困難、現在鬱は「社会因」の方に注目が傾いているが、より本人の「主体性」に注目するCBT等の療法やレジリエンス概念の拡大によって今後どう変化していくだろうか。2017/05/11
やっぱ犬が好き♡
5
うつ病治療においても、古くから欧米では「バイオロジー(生物医学的アプローチを基盤とする)派VS精神療法派」の対立構図がある。日本ではそうした二項対立の影響があまり見受けられず、日本の企業文化や社会状況と結びついたうつ病論が社会にも広く浸透している。個人の身体に社会状況を見いだすうつ病を過重労働の「ストレスの病」と見なすうつ病論は、どのようにして生まれたのか?歴史的観点から欧米、日本のうつ病論の変遷について論じる一冊。本書を読むと、時代時代によって異なるうつ病の原因論・治療論の多様さにとにかく圧倒される。2022/03/06
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