内容説明
高校入学を控えた春休み、鰐川草は不思議な美術館に迷い込む。「外してはいけない」という奇妙なルールとともに手渡されたヘッドホン。だが他人のヘッドホンを奪う闖入者の出現で、悪意のゲームに巻き込まれていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
彩灯尋
18
美術館の絵をどれでも1枚持ち帰って良い。ヘッドホンを外してはいけない。一度外に出たら二度と入ることは出来ない。不思議で謎が多くて、脱出ゲームのようなわくわく感。この美術館はなんなのか、どういう目的があるのか。進むにつれて謎が明かされていくストーリーはとても面白かった。読後感も気持ちがいい、さわやかな感じがとても好き。2025/06/29
冬野
6
初読み作者さん。中学生の草は不可思議な規則のある美術館に迷いこむ。その内部では出所不明の噂が出回っており…。あらすじはサスペンスフルな雰囲気だが、個人的にはもう少し内省的な内容だと感じた。かなりお若い作者さんだと思うんだけど、自分が想定読者から外れているせいか「今の若者が生きる世界は複雑だな、大変だ」と水槽の外にいるような感想を抱いた。知らないシステム&ルールで進行するゲームのプレイ動画を、画面のこちら側でずっと眺めているような…今後こういう感想を持つ作品が増えていくと思うとなかなか切ない。星:3.5/52024/08/28
栗山いなり
5
高校入学を控える少年が不思議な美術館での騒動に巻き込まれる物語。何というか…思ってたのとは違ってたけど不思議と読み進めてしまった小説だった。上手く感想が出てこない作品だなこれ2024/08/25
yraurb
4
時代に逆行するような規則を突きつける美術館に迷い込んだ主人公が、密室めいた状況の中であれこれと感じたり考えたりする話。謎めいた状況は最近のCoCリプレイ動画くらいの奇妙ぶりなのだが、この話ではそこはあまり重要じゃない。物語としてどうこうと言うより、今の時代の空気感をよく言語化していて、そこがいい。2024/09/11
めぐ
3
ノイズの吹き溜まりを吐き出す事が主目的であるという不思議な美術館に迷い込んでしまった人々の物語。ライトな館モノのような雰囲気を楽しんだり、SNSとの向き合い方を抽象的に考えさせようとするとこうなるのだろうか…などとメタな事を考えたりしつつもサラッと読めた。多分私は折角だから何か絵を持ち帰ろうと考えるタイプだが、ヘッドホンを奪われても大丈夫そうな気がする。人間マイペースを極めれば他人の言葉に一喜一憂したり同類を求めたりはしないものだが、彼等はまだまだ青いな、青春小説だしな。着地点は無難なボーイミーツガール。2025/02/26