内容説明
その言説のほぼすべてが出揃った今こそ、読み直さねばならない──。ミシェル・フーコーの探究は、知・権力・自己との関係という三つを軸に、多様性と絶え間ない変貌によって特徴づけられる。そうした彼の言説群を貫いて存続する「フーコー的」なものがあるとすれば、それはいったい何か。前史ともいえる50年代のテクストから『性の歴史』第四巻『肉の告白』まで、精確な読解によって思考の全貌が明らかにされる。フーコー研究・翻訳の第一人者による待望の書。
目次
凡例
序章 フーコーのアクチュアリティ
第一章 フーコー前史
1 人間の学としての心理学
2 夢と解釈
3 精神の病と脱疎外
第二章 狂気の真理、人間の真理
1 監禁と狂気
2 人間学的錯覚
3 疎外された狂気
第三章 不可視なる可視
1 狂気の消失
2 暴露と隠蔽
3 表層から深層へ
第四章 有限性と人間学
1 有限性の地位
2 深層の発明
3 人間学の眠り
第五章 新たなポジティヴィスムへ
1 人間学的隷属からの解放
2 歴史とアプリオリ
3 言説と解釈
第六章 「魂」の系譜学
1 言説と権力
2 身体刑から監獄へ
3 身体の監獄としての魂
第七章 セクシュアリティの装置
1 セクシュアリティの歴史
2 従属化、真理、抵抗
3 生権力
第八章 自己の技術
1 フーコーの哲学
2 快楽から欲望へ
3 主体と真理
終章 主体性の問題化と自分自身からの離脱
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
わたなべよしお
15
同じ筆者の岩波新書を読んで興味を持ったので、選書にも手をだしたが、新書の方が分かりやすかったような気がする。ちょっと文章が酷すぎるしね。大学の授業で教授が自分だけで興奮して話していて、こっちは白けて何を言わんとしているのか、よくわからない。大袈裟に言えばそんな感じだ。新書を読んだ時はフーコーって面白そうだな、と思ったのに。2020/01/17
恋愛爆弾
14
短くまとめすぎてなんのこっちゃわからなくなっている岩波新書の同じ著者の入門書より、はるかにのびのびと書かれていてわかりやすい入門書。少なくとも基礎的かつ詳しい解説付きのフーコー年表を頭に思い描くことくらいは本書において可能になる。2023/10/01
武井 康則
8
フーコーの思索の進化を見るために、年代順に検証していく。その際フーコーの「言説」のレヴェルにとどまりつつ行うと言明している。それは、フーコーが「考古学」の任務を「語られた限りにおいて記述する」と定義しているからだろう。フーコーの手法でフーコーを語る。膨大な資料から引用箇所を適切に配置する必要があるだろうが、丁寧にテキストを読み、十分やりこなしている。当然哲学の基礎的な知識は必要だが、フーコー理解の最善テキストのひとつだろう。2020/03/06
あ
3
フーコーで読んだことあるのは『言説の領界』だけだが、この書に限って言えば、(訳者が同じということも上乗せしてると思うが)フーコーの言葉を丹念に拾いながら、書かれた言葉に即してかなり忠実に読解していると感じた。おそらく他の章でも同様の忠実さを貫いてると思われる。従ってフーコー特有の回りくどさまでもが本書の記述に持ち越されている。あと、専ら著者の哲学的関心を主軸として要約されている。つまり歴史学的研究に伴う個々の資料の具体的な読み解きなどはすっ飛ばして思想史的な観点からの結論がひたすら並べられている。2021/07/20
Mealla0v0
3
フーコーの言説を全時代を通じて、そこに一貫する「主体と真理」というテーマから読み解く一冊。50年代のフーコーは実存主義・人間主義に囚われていたが、60年代の考古学的研究を通じて人間なるものの解体を試みる。言説の構成という問題から権力の問題が浮上し、離陸すると、それは統治の問題へと向かい、最後には自己との関係において統治が問われることになった。本書はフーコーを読むうえでの見取り図を提供してくれる。個人的には権力論の内的背景を知れたことはよかったが、晩年の思想への道筋が理解できたことがなによりだった。2019/01/21