内容説明
切実な物語を誠実に描いた、その先にある救い。
軽率に手に取って、打ちのめされるこの感じ。
今もっとも読まれてほしい作家・古矢永塔子の勝負作!
――書評家・藤田香織氏、大推薦!!
「私が死ぬまでの一年間、くそみたいなこの世界に八つ当たりするのに付き合ってくれない?」
中高生に人気のベストセラー小説『君と、青宙遊泳』。それは、高校教師・卯之原朔也がかつて封印した物語に酷似していた。
今は亡き高校の同級生・日邑千陽と過ごした7年前の夏――あれは「僕たちだけの物語」だったはずなのに。
覆面作家ルリツグミの正体を探る卯之原の前に、当の本人が転校生として現われる。
「生まれ変わったら、深海魚になるのもいいよな」
愛とか死とか幸せとか、その言葉の本当の意味を僕たちはまだ知らなかった……。
乾ききった心を潤す、書き下ろし長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
109
web小説から単行本となった大ヒット小説。それは高校教師卯之原の高校時代の友人日邑との思い出をなぞるものだった。しかもその作者は彼の勤務する高校の転校生妻鳥。なぜ妻鳥はその物語を?後半になると卯之原と日邑の関係、共に家庭環境や難病という生きづらさを持っており、小説のように華やかで爽やかな恋愛物ではないことが明らかとなってくる。ありきたりの難病物ではなく、死の真相を知ることにより今まで避けていた彼女との過去を見つめ直し変わっていく卯之原の姿がよかった。でも私にはちょっと若すぎて青臭い部分もあった。2024/11/29
のぶ
93
余命宣告された女の子との、自分だけの思い出がなぜベストセラーになっている、という設定にまず惹かれる。しかもその女の子の最期は病によるものではなく線路からの転落によるという。病院を抜け出してどこに行こうとしていたのか。そもそも、それは自殺なのか事故なのか。そして自分だけの思い出を小説として書いた少年が、自分が教える学校に転校してくる。なんとも複雑な様相を呈している。あまたある余命モノとは一線を画している。初めて読む作家さんで、最初読み進められなかったが、進むにつれ徐々に楽しむ事ができた。2024/08/27
itica
66
ファンタジーか?いや、不穏な空気が流れているから事件が起きるのかも。と、最初は方向性が分からず戸惑う。やがてこれは教師の卯之原と、生徒でありベストセラー作家である妻鳥を救いへと導いて行く物語だと気付く。たとえ暗闇を泳ぐ魚でも、ほんの一瞬のきらめきや生きている証は得られるだろう。誰にだってその権利はあるはずだ。 2024/07/30
がらくたどん
64
ある高校教師の赴任校に覆面小説家の生徒が転校してきた。ブレイク出版作は余命宣告された奔放な女子高生と彼女に翻弄される地味な優等生の交流と別れ。その物語は教師が心に秘めた記憶のストーリーに不自然なほど重なる。自分はモデルにされたのか?情報提供者は誰?「創られた物語」と「存在したストーリー」が時を遡って縺れはじめる。魅力的な構成。ただ、自分のかなり特異的な体験が「物語」として出版されたら私なら相当に恐怖だし、モデル小説と分かった時点で許諾を進言しない編集者は禍根を残すと思う。この危うさだけが小骨として残る。2024/08/19
ヒデミン@もも
54
良かった。帯に『今もっとも読まれて欲しい作家‥』とある。確かに『もっとも』とは言わないが、もっと読まれて欲しいとは思う。くそみたいなこの世の中に八つ当たりする青春物語。現実は、そう甘くも美しくもないけど、君が想像するより案外良かったりする。過去を振り返りたくないのは君だけではないよって、背中を推してあげたい。逆に過去の栄光だけに縋って生きる方がもっともっと辛い。未来だけ見つめて生きていけるのは幸せ。2024/09/04