内容説明
英国の諜報員オスナードは、パナマ運河返還後の政情を探るためパナマへ向かう。彼は要人御用達の仕立屋ハリーに目をつけ……。 ジョン・ル・カレの名作を連続刊行/『ナイロビの蜂』(2024年8月刊)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
52
「それだけの歳月、世界情勢を私のような眼で見てきたら、このあとやれることはもうふたつしかない。すなわち、笑うか自殺するか。本書の主人公はその両方を巧みにやってのけているが」あとがきに入っている、ル・カレのインタビューから。もう一回読もう。2025/02/19
k5
43
二周目。上巻の解像度は一気に上がったのに、下巻はまだ難しい。さすがル・カレ。。。下巻冒頭でオスナード視点になってから、やっぱりペンデルに落ち着くところが、本当はアクロバチックなのに落ち着いて見えるのが難しいところなのだよな。もう一周読みたい。2025/03/31
鐵太郎
22
英国の伝統ある仕立屋の弟子で英国流の洋品店の店主という仮面を暴かれたベンデルは、諜報担当としてパナマの英国大使館に赴任してきたオスナードにより、パナマの大物であるエルンスト・デルガドの側近である妻のルイーザをスパイするよう強要されます。パナマ運河が米国からパナマに引き渡される期限を目の前に、功をあせる諜報員と巻き込まれた仕立屋のちぐはぐなスパイごっこの末、人は死ぬは浮気は盛んだわ、てんやわんやのトラブルだらけ。この決着はどうついたのか。──しかし、終盤この方の文章、読みにくかった。読むのに時間がかかった。2025/06/29
春風
13
主人公の周辺人物の視点が増える下巻。既読のル・カレ作品とは趣が異なり、読後感もまた違う。もし、この作品のあらすじをネタバレを厭わず誰かに伝えたとすれば、受け手は十中八九はかなり悲惨な結末の悲劇であると受け取るだろう。しかしながら、本作は悲劇を戯画的な喜劇で描ききっており、小説そのものが持つポテンシャルをひしひしと感じることができた。本作のテーマや結末は、昨今の情勢と共鳴してきていて、いまこそ新たな価値を獲得し得る作品だと思う。劇場版もあるとのことなので、サブスクにラインナップされたら観てみようか。2024/09/03
西村章
5
ある登場人物が虚飾にみちた人物像を自ら剥ぎ取って血を流すように半生をあからさまにしてゆくさまは、たしかに『パーフェクト・スパイ』のマグナス・ピムを髣髴させるような鬼気迫る迫力がある。他の作家の文章なら辟易するだろう豊穣な比喩を用いながら、どことどう繋がるのか判然としないエピソードの集積が、ある場面(今回の場合はゴルフ場の雨宿り場面かな)をきっかけにそれまでの細部がうねるように絡み合い全体像がダイナミックにうごめきはじめる構成は、いつもながらおみごとのひとこと。だからこそ、ラストのカタストロフも哀切極まる。2024/09/17
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