「叱れば人は育つ」は幻想

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「叱れば人は育つ」は幻想

  • 著者名:村中直人
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • PHP研究所(2024/07発売)
  • ポイント 10pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784569853826

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内容説明

村中直人氏は、脳・神経科学などの知見から、叱ることには「効果がない」と語る。叱られると人の脳は「防御モード」に入り、ひとまず危機から逃避するために行動を改める。叱った人はそれを見て、「ほら、やっぱり人は叱らないと変わらない」と思ってしまうのだが、叱られた当人はとりあえずその場の行動を変えただけで、学びや成長を得たわけではないのだ。そして厄介なことに、人間には「よくないことをした人を罰したい」という欲求が、脳のメカニズムとして備わっているため、叱ることで快感を得てしまうのである。では、どうすれば人は成長するのか。本書は臨床心理士・公認心理師で、発達障害、不登校など特別なニーズのある子どもたち、保護者の支援を行ってきた著者が、「叱る」という行為と向き合ってきたさまざまな分野の識者4人と、叱ることと人の学びや成長について語り合った一冊である。1人目は元東京都千代田区立麹町中学校校長で、「宿題廃止」「定期テスト廃止」「固定担任制廃止」などの学校改革を実践した工藤勇一氏。工藤氏は、叱責ではなく問いかけを糸口にして対話をしていく方法」として「1『どうしたの?』 2『きみはこれからどうしたいの?』 3『先生に手助けできることはある?』」の三つの言葉を学校の教員に伝えてきた、と説く。2人目は企業・組織における人材開発・組織開発について研究している立教大学経営学部教授の中原淳氏。部下指導の際に、叱責ではなくフィードバックというアプローチを行うことを提唱している。フィードバックとはまず、相手にとって耳の痛いことであっても率直に伝える「現状通知」を行い、その後に「立て直しの支援」を行うというものである。3人目は元女子バレーボール日本代表の大山加奈氏。日本代表合宿の練習で怒声を浴び続け、心のバランスを崩し、不眠や激しい動悸に苦しみ、ひどいときには目の前が真っ暗になって倒れるまでになったという。「勝つことだけがスポーツの価値ではない、子どもたちには笑顔でスポーツに親しんでほしい」と語る。4人目は、編集者で株式会社コルク代表取締役社長の佐渡島庸平氏。そもそも人を叱らなければならない状況に陥るのを防ぐ「前さばき」について取り上げ、幸福度を上げる「三角形のコミュニーション」について紹介する。単に「叱る」「叱られる」の関係だけではなく、広く人と人とのコミュニケーションにとって大切なことは何かを問う一冊である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

hiace9000

108
「叱る」or「叱らない」シリーズ、鋭意勉強中。著者はスクールカウンセラー経験もある臨床心理士。4人の著名識者との対談形式で綴る、大きな学びを実感できる一書。誰もが陥る危険もある「『叱る』依存」。加えて日本に根強く残り続ける、苦しむからこそ成長できるという「苦痛神話」や、修羅場が自分を変えてくれたとする「修羅場イリュージョン」。脱イリュージョン的社会通念のためにも、まずは大人が!と決意。昔は「怒るはNGだが叱るは○」だったものが、今や「不機嫌は罪、怒るなどもっての他。叱ることに正当性などなし」の時代である。2024/10/31

たまきら

36
私もタイトルには賛成です。対談も素敵なエピソードがたくさんあります。そうーおおまかな部分には大賛成なんですが、では「叱る」の定義はなんなのか。具体的にはどのように「指導」すべきなのか。そういう疑問にはふんわりとしか答えしか提供されていないのがちょっと寂しいです。もちろん一人として同じ人がいない中、マニュアル化が難しいのも確かなんですが…実践編が今すぐ知りたいと思ってしまう自分なのでした。2025/02/09

kan

31
The great teacher inspires.という有名な言葉がある。まさに著者の言う「冒険モード」に至るように手助けできる指導者のことだろう。そこに誘導するためには、「前さばき」、つまり指導者側の見通す力が必要だ。勤務校の文化祭を前に、クラスの生徒の様子にヤキモキし、うるさく言ってしまわないよう戒めのために毎朝読みながら通勤した。叱る行為は処罰感情を満たし自分が気持ちよくなるだけの依存状態であること、叱られる側はfight or flight状態だから染み込まないことなど心当たりがありすぎた。2024/09/06

k sato

30
「叱る」は処罰欲求を満たす依存行為である。処罰感情を正当化するために叱ることを止められない。その心理と脱却方法を著者と4名の識者が語り合う。バレーボール元日本代表の大山加奈氏が語るスポーツ界に蔓延る苦痛神話。辛い思いをしなければ強くなれないという思い込みが、叱られることを受容してしまう。成長に繋がる我慢とストレスになる我慢。社会通念を変えなければ「叱る」依存からの脱却は困難である。「叱る」行為は、相手のためではなく「叱る」側の保身のためという真実。「叱る」側が気づかなければ「叱る」行為はなくならない。2024/09/07

ta_chanko

27
「叱る」ことは相手の闘争or逃走反応を引き出す行為。一時的に効果があったように感じてられても、根本的な解決にはならない。相手が自発的に問題を解決できるように導くことが、広義の「叱る」行為。また、相手を罰することが快感になってしまい、ますます「叱る」ことがやめられなくなる(叱る依存)。重要なことは、「前さばき」によって問題が起こる前に対処すること。問題が起きたら、当事者自身が自発的に解決できるように導くこと。スポーツ指導の場合も同様。結果至上主義におちいって選手を潰してはならない。2024/09/18

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