ちくまプリマー新書<br> ことばが変われば社会が変わる

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ちくまプリマー新書
ことばが変われば社会が変わる

  • 著者名:中村桃子【著者】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2024/07発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480684875

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内容説明

ことばは社会の見方や価値観をゆるがす一方で、社会もまたことばの使われ方に影響を与えている。新しいことばのインパクトとそれに対する抵抗や躊躇、こんがらがった関係を事例とともにのぞきこみながら、私たちがもつ隠れた意識を明らかにし、変化をうながす。 【内容のほんの一例】ことばが社会を変化させるメカニズム/ことばが変わることにはどの社会でも強い抵抗がある/「伝統」や「習慣」をカラッと転換させるカタカナ語/「男になる、男にする」と「女になる、女にする」/なんでも略す日本人と「意味の漂白」/「ご主人・奥さま」?「夫さん・妻さん」?/――ひとの配偶者の呼び方がむずかしいのはなぜ?/「正しい日本語を話したい」と考えてしまう私たち/既存の価値観がすべてではない

目次

はじめに/「社会反映論」と「社会構築論」/ことばが社会を変化させるメカニズム/「言語変化」から「社会言語学的変化」へ/ことばの価値や使い方の変化に注目する/ことばが変わることにはどの社会でも強い抵抗がある/本書の構成/第一部 ことばが社会を変える──「セクハラ」「イケメン」「クイア理論」/第一章 「セクハラ」は社会の何を変えた? /「この新しいことばが事態を激変させる」という確信/「セクハラ」の意味をめぐる闘争/セクハラを防止する義務と法改正/新しいことばは新しい考え方を提案する/大人の女性社員を「女の子」と呼ぶこと/男性も「見られる客体」になった/「伝統」や「習慣」をカラッと転換させるカタカナ語/被害者ではなく加害者に視点を移動させることば/第二章 戦略としての「あえて」と「ラベル」/「男になる、男にする」と「女になる、女にする」/否定的なことばとしての「女」「男」/「おかま」をめぐる逡巡/ラベルを増やして二分法の境界を揺らす/セクシュアリティは社会的につくられる/曖昧な生物学的性別/「異性愛」ということばが遅れて登場した理由/セクシュアリティは語られることでつくられる/異性愛を「自然で自明のもの」とする規範/二項対立をゆるがす「クイア理論」「交差性」/メディアはいかに人を〈他者〉として描くか/規範にもグラデーションがあることがわかると二項対立の意味もなくなる/ゲイカップルにおいても規範は生まれる/たくさんのラベルが必要だとわかった/第二部 変わっていく意味──拡大・規制・漂白/第三章 流行語「女子」がもたらしたもの/ことばの意味が変化していく過程/「婦人」→「女性」→「女子」/「女子会」「リケジョ」の登場/「女子」の経済効果/自分の人生の主役でありたいというメッセージ/循環することば、結びつく領域/女性たちによる保守運動/伝統的な「女らしさ」と過激な行動の矛盾/「女子」によるラッピング戦略/第四章 “girl power”はなぜズレていったのか/「女子力」とはどんな力なのか/新自由主義社会の女子力/かっこいい生き方としてのgirl power/脱毛広告の「GIRLS POWER」/「キレイになるとつよくなれる」? /言語を超えてずれる意味/いまある考え方を変えない意味を与える/既存の価値観がすべてではない/第五章 誰が意味をはがされるのか/怒り狂うガービー先生/「間違った名前を使う」という権力/名前を聞き直されたら? /訂正をしなければいけなくなるのは誰? /イングリッシュネームの功罪/下の名前で呼び合う男子学生/習近平は「しゅう きんぺい」か「シー・チンピン」か/なんでも略す日本人と「意味の漂白」/視聴者はメディアの言葉を自在に使いこなす/否定的意味をはぎとる/第三部 ことばを変えられないのはなぜか──言語イデオロギー/第六章 「ルール」を優先してしまう私たち/パートナーの呼び名問題/社会の権力構造と言語イデオロギー/呼び名がつくる関係/しっくりこない「ご主人」「嫁」/他人のパートナーをどう呼ぶか/松山ケンイチの「嫁」/「大谷翔平の妻」を日本のメディアは何と呼んだか? /「他人のパートナーは丁寧に呼ぶ」というルール/戦後までは「夫」が使われていた/「主人」の〈高級感〉/第七章 「パートナーの呼び名問題」解決編/呼び名の代案とその問題/「パートナー」は結婚していない人なのか/こんがらがるMs. Mr. Mrs./対等なパートナーの呼び名は七〇年前から提案されてきた/「正しい日本語」を話したい/正しい話し方のルールに従う重要性/アメリカの大学では先生をどう呼ぶか/「自分で考える」より「正しいもの」を選びたい? /誰かに決めてほしい/法律で決めればすぐに変わる/普及のために1 組織で取り決めてしまう/普及のために2 〈高級感〉を逆手に取る/はじめは慣れないけれど聞くうちになじむ/複数の呼び名の使い分けが楽しめる社会/おわりに

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

hiace9000

108
社会言語学、文字どおり社会と言葉の関係を扱う分野。近年両者の関係の理解に大きな変革があったとし、それを「社会言語学変化」として捉えなおす提案がされている。言葉と社会は互いに影響し合い、言葉に関わる価値やルールの変化が社会を理解する枠組みや社会変化を”実際に”強く促している。セクハラという言葉の浸透が職場の人間関係を理解する新しい枠組みを提供し、パワハラやアカハラという新たな視点を生み出し社会を変えた典型となったように、身近な言葉や流行語がもたらす様々な言語現象を、発見と納得とともに興味深く学ばせてくれる。2024/09/27

とよぽん

51
視点がよかった。新たな気づきが得られて面白かった。特に、人種の違い(力関係)から名前の発音を変更させられるとか、名前そのものを改めることを強制されたという事例に重大な人権侵害があったことを知らされた。さらに、日本人は言語規範を大切にすることも指摘され、自分で判断しないで世間的に正しいと思われる言葉・称呼を使おうとする傾向にも納得。多様性を認め寛容な社会になるために、ことばに対するアンテナの感度を上げなくてはと思った。2024/11/30

ムーミン

51
言葉はそれを使う民族がずっと大事にしてきたものが凝縮されていて、それを使い受け継ぐ中でDNAとしてその社会に生きる人たちにいつの間にか浸透しているものがある。言霊というのもその通りだと、40年ほど国語教師として子どもたちとともに、真摯に言葉に向き合ってきた経験から感じています。この本に書かれたものを読んでいると、言葉の面から、何を大切にしようとしてきて、今の時代、社会に対して、どう捉え、どうしよう、どうしたいと考えているのか、中村氏の挙げてくださった具体やデータから興味深く考える機会となりました。2024/07/29

よっち

36
ことばは社会の見方や価値観をゆるがす一方で、社会もまたことばの使われ方に影響を与えている。事例を挙げながら私たちがもつ隠れた意識を明らかにしていく1冊。新しい考え方を提案した「セクハラ」、戦略としての「あえて」と「ラベル」、思わぬもの同士を繋げていく流行語、パートナーの呼び名問題といった事例を取り上げていきながら、ことばが社会を変化させるメカニズムをわかりやすく解説していて、変えることに強い抵抗感があることばを、提案することで価値観が変わっていくこと、正しい日本語を話したい気持ち心理を改めて実感しました。2024/08/16

かさお

31
興味深かった。他人の配偶者を何と呼べば良いのか問題、そう、私もそれモヤモヤしてる。習慣的に「ダンナさんは?」と問うが、逆の立場であれば「奥さんは?」となるのだろう。流石に「ご主人は?」とは言いたくない、ダンナと奥さんは許容範囲。1番嫌なのは「嫁が」と言われる事だった。と私の見解は置いておいて、「おつれあいさん」とか、新しい言葉を誰かが作って世の中に周知してくれ、という話でした。我々は「正しいか?正しくないか?」「間違えると恥ずかしい」ので、保母さんが保育士になったように、政府よ、作って決めてください。2024/09/18

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