内容説明
舞台は東ヨーロッパの紅葉に染まった谷間にある不妊症に効くとされる小さなリゾート温泉保養地。亡命を決意したヤクブは、友人らに永遠の別れを告げるべく、ここにやってくる。ふとした成り行きから薬の小壜に混入された毒薬……物語が動き出す。医師、若い女、高名なトランペット奏者と美貌の妻、アメリカ人湯治客――幾組もの男女がすれ違いもつれ合い交錯する。愛、欲望、裏切り、個々の選択が引き起こす予測不可能な結果……。めくるめく円舞とともに演じる五幕のヴォードヴィルは「小説の魔術師」クンデラの初期の傑作!
目次
初日
二日目
三日目
四日目
五日目
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
96
愛と死はまさに別れのワルツだと思わされました。何組もの男女がすれ違い、絡み合いながら演じられる恋の輪舞は、奏でられる音楽のように心に響きます。亡命の決意が演じることになった5幕の円舞は、永遠の別れの協奏曲となったのでしょう。その曲が哀愁を誘う美しさがあるように感じました。2016/11/26
syaori
61
描かれるのは数人の男女が織りなす悲喜劇で、軽やかに愛、性、生が絡み合うその輪舞の哀しみはヤクブが祖国への自分の拙い愛を悔いる場面で頂点に達します。その慨嘆は彼が軽蔑し憎悪した中身もないのに「感嘆されたい」特別になりたいと願うルージェナと同様、正義と共に生きてきた高邁な自分も評価を求めて「同類たちに愛着し執着し」ていたという現実と重ね合わされ、同時にそれはそれを肯定するバートレフと正義の外で生きるスクレタが織りなすグロテスクで明るい大団円の陰画でもあり、作者一流の生きることへのアイロニーと鼓舞を感じました。2026/08/13
zirou1984
42
軽やかに踊ることで別れを告げる相手は一夜限りを共にする相手なのか、それとも二度とその地を踏まぬと決意した祖国に対してなのか?クンデラにしては比較的オーソドックスな形式で描かれた5章‐5日間の協奏曲。ダンスのパートナーが次々と入れ替わるように、対比的な会話が次々と交差し、愛という観念は決して留まることなくその印象を変えていく。そして嫉妬や後悔、情念といった感情を精緻に明晰に切り取ってしまうクンデラならではのその筆力が、普遍的な恋愛物語を悲劇と困難に直面した歴史のメタファーとして成立させているのだろう。2014/09/16
燃えつきた棒
29
どうもこの書名には、僕の心を惹きつけずにはいられない魔力があるようだ。 そういう訳で、僕の本棚にはこの文庫本が二冊ある。 それも、両方とも新刊というのだから恐れ入る。 そういう訳で、三冊目を購入しないうちに、読んでみることにした。 実際に読んでみると、書名から悲恋への過剰な期待を抱いていた分、あまりにもありふれた下世話なストーリーに、<物語の耐えられない軽さ>を感じざるを得なかった。 2017/11/15
こうすけ
22
妊娠、堕胎、不倫についてのシニカルなラブコメといった筋書きに、クンデラらしく亡命や密告や共産主義といったテーマが絡まり合い、結果唯一無二の笑って楽しめる政治小説が完成。すいすい読めて面白いのでクンデラ入門におすすめ。2025/05/22




