内容説明
ろうの両親の元に生まれた「ぼく」。小さな港町で家族に愛され健やかに育つが、やがて自分が世間からは「障害者の子」と見られていることに気づく。聴こえる世界と聴こえない世界。どちらからも離れて、誰も知らない場所でふつうに生きたい。逃げるように向かった東京で「ぼく」が知った、本当の幸せと
は。親子の愛と葛藤を描いた感動の実話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
51
成長と共に肌で感じる「異」。遊びに来た友人、近所の花壇の問題など、直接・間接的な周囲の言動の1つ1つがボディブローとなり、何事も他責に傾倒。表層的な「好き・嫌い」ではなく、「理解できない・しない」”壁”。1つ目の転機は、バイト先での”通訳”。飲み会で認識させられた”2つ”の世界。2011年の震災が、2つ目の転機。帰郷して目にした現実と、その震災を経た2年後に亡くなった祖母を嘆く母に、自分を重ねて見えた本質。母のお礼、私自身の母が亡くなる半年くらい前の施設での出来事が重なる。いやぁ、グッとくる。2025/07/07
涼
12
85点。映画が良かったので原作を読もうと思って本作を手に取った。結果、素晴らしかった。映画ではグッときて涙が流れたのは1ヵ所だけだった、小説では10ヵ所ぐらいあり、外で読んでいたので人目をはばかってしまった。主人公はコーダであり、「聴こえない親を守りたい」という肯定的な気持ちと、「聴こえない親なんて嫌だ」という否定的な気持ちとの狭間で大きく揺れ動く。その精神状況が平易な文章で包み隠さず述べられている。特に母を愛しているのに母を傷つけてしまうところは読んでいても辛い。それでも、どんなことがあっても息子を愛す2024/10/18
ちえちゃん
7
コーダという言葉を初めて知った。障害者の子として生まれた著者の思いが、特に母親への想いが素直に書いてある。私は著者の成長と共に移り行く感情を素直に受け止める。いろんな人が住み良い世界になればいいなぁ☺️2025/06/17
noko
5
コーダという呼び方があることをこの本で初めて知った。父母が聾者で、その息子(大ちゃん)は耳が聞こえる。祖父母と同居している。子供時代〜大人になるまで、彼の生きてきた道がわかる。お母さんは、とても愛情深く、愛嬌があり、耳が聞こえなくても一生懸命に大を育てます。大は聞こえる世界の学校や社会、聞こえない世界である実家との間で、行き来し、時に葛藤します。学校でも嫌な思いをしたり、親が聞こえないことで、差別的なことも。祖父は元ヤクザのアウトサイダーだが勇ましい。聞こえないのかもしれないけど、どこにでもいる家族。2025/08/19
つかさ
5
「わたしの耳が聴こえないから、わたしが障害者だから、息子をいじめるの?」 〈電車のなかで、大勢の人たちが見ている前で、手話を使って話してくれて、本当にうれしかった。〉2025/06/20