内容説明
中山義秀文学賞受賞&「オール讀物」誌「時代小説、これが2021年の収穫だ!」――傑作和歌ミステリー、待望の文庫化
鎌倉初期の天才歌人・藤原定家の恋と「百人一首」の謎に迫る
平安時代の最高権力者・藤原道長に連なる藤原北家ながら傍流の御子左家は、歌壇ではそれなりの実力を発揮しているものの、公家の出世レースではパッとしない家柄。当家の次男に生まれた藤原定家は、病由来の難聴を克服し、侍従時代の同僚で親友の藤原家隆らとともに『新古今和歌集』の選者を務めるなど、歌壇でめきめきと頭角を現す。鎌倉幕府に押され気味の朝廷の復権を目指す後鳥羽院は、そんな定家に、三代将軍・源実朝に京への憧れを植え付けるため「敷島の道(和歌)」を指南せよと命ずる。後鳥羽の野心は肥大し、ついには倒幕の兵を挙げんとするが……。
知らぬ人のいない「小倉百人一首」には、なぜあの100首が選ばれたのか? 同じく藤原定家選の「百人秀歌」より1首少なく3首だけ異なる理由とは?――「承久の乱」前後の史実をきらびやかに描きながら、その謎を解き明かす。
【目次】
一の章 還御の噂
二の章 いとしの友よ
三の章 菊花の王
四の章 はかなき鎌倉将軍
五の章 勅勘と大乱
六の章 嵯峨山荘の障子和歌
附 記
解 説 大矢博子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
92
中山義秀文学賞受賞作品ということで手に取りました。ある意味時代ミステリー的な趣があります。藤原定家と後鳥羽院、藤原家隆の3人が主人公のような気もします。初めの方は「小倉百人一首」が集成された経緯などがありますが、その後は3人の若いころの歌をめぐるやり取りなどが中心となっています。再度「百人一首」の本を読み直そうかという気にさせてくれました。2024/07/12
Y.yamabuki
22
藤原定家を主人公とする和歌と歴史の物語。単なる言葉遊びと思っていた本歌取り、その重要さを定家に教えて貰った。定家の歌に対する想いを描く傍ら、源実朝と朝廷の関係から承久の変へと当時の歴史を朝廷側から語られているのが興味深い。定家=百人一首というイメージしかなかったが、承久の変は同時代を生きた定家の傍らで興こったことだと改めて認識した。 定家、家隆、後鳥羽院の関係の描き方も面白く、拗ねた定家の人間臭さも読みどころ。 2024/08/07
まぁみ
21
百人一首の勉強にはならない笑。定家の生きた時代背景がよく分かり、グッとくることも。予想外に面白い展開や登場人物たちに驚かされつつ楽しめた。定家好き。2025/01/25
rizu
11
なぜかあまり好きでなかった定家のイメージも百人一首への思いも大きく変わる一冊だった。2024/12/02
わいほす(noririn_papa)
11
大河ドラマに出てくる人物の百人一首の歌をつい確認してしまう今日この頃。タイトルに惹かれて手に取ったが、よくよく考えれば百人一首は鎌倉時代に作られたのだった(笑)。とはいえ、本歌取りを幾千年積もった思いの重畳としておのれの思いを載せる和歌の真髄と説くシーン、男色の恋歌はありうるかと悩むシーンなどは面白く、また後半の京都側から見た承久の乱もまた面白い。そして乱後に作られた百人一首の最後を後鳥羽、順徳天皇の歌が飾られた謎を解くミステリーでもある。しかし忘れてるなあ、百人一首の歌と作者(笑)。2024/08/04