内容説明
「君の行為の格律が君の意志を通じて普遍的な自然法則になるかのように,行為せよ.」カント哲学の導入にして近代倫理の基本書.人間の道徳性や善悪,正義と意志,義務と自由,人格と尊厳,共同体と規則などを考える上で必須の手引きである.訳語を精査し,初学者の読解から学術引用までを考慮した新訳.
目次
凡 例
序
第一章 道徳についての普通の理性認識から哲学的な理性認識への移り行き
第二章 通俗的な道徳哲学から道徳形而上学への移り行き
道徳性の最上位の原理としての意志の自律
道徳性の真正でないあらゆる原理の源泉としての意志の他律
他律を根本概念に採用することで可能になる道徳性のあらゆる諸原理の区分
第三章 道徳形而上学から純粋実践理性批判への移り行き
自由の概念は意志の自律を解明するための鍵である
自由はあらゆる理性的存在者の意志の特性として前提されなければならない
道徳性の諸理念に付帯している関心について
定言命法はどのようにして可能なのか?
あらゆる実践哲学の究極の限界について
結 語
訳 注
訳者解説
索引・訳語一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しんすけ
21
十八歳位頃から、折々に読んできた書。それから六十年近くを経たが、ようやくカントが考えたことを自分の言葉として、僅かだが語ることが可能との確信が生まれ始めた。 多くの人がそれを尊厳の念で迎えることが可能であるものを道徳という。もし道徳として呈示されたものにあったとしても、それに対して尊厳を抱くことができないのならば、それは偽りの道徳である。 こうしてみると、道徳として称して呈示されたものを改めて観ると、その多くが偽りであること多い。 それは正義をもって為す行為には偽りがない、そう言えることと同義なのである。2024/04/30
Kooheysan
7
もう少し理解を深めたくて、この岩波文庫の新訳に挑戦。カントのこだわりが少し掴めたような気がします。それにしても、その場限りの感覚や傾向性にとらわれていてはダメ、というのはなるほど、そうでしょうというところ。で、それならば普遍的な道徳法則(定言命法)を見つけて、その方向で行動することに善を見出す…あくまでも他律ではなく、自律、ということを突き詰めて考えていくのがさすがなところ。折に触れてまた読み返してみたいです。2025/08/31
エヌ氏の部屋でノックの音が・・・
4
2024年 4月12日 発行 2024/11/08
無能なガラス屋
3
「無邪気というのはすばらしいことだが、ただしかし、きわめて困ったことに、きちんと保持することができず、たやすく誘惑されがちなものでもある。だから知恵でさえも(知恵とはそもそも、知識ではなく行状のうちにある)、やはり学を必要とするのだが、それは知恵に学ぶためではなく、知恵の指令を受け入れて持続するようにするためである。」2025/11/30
人間の手がまだ触れない
3
読書会で読了。後にヘーゲルらに批判される点でもあるが、本書でのカントの議論は常に二つの理路を提示し、どちらかを選ぶ形で進むため、非常に読みやすく流れも掴みやすい。終盤のメイントピックであり『実理』の主題でもある自由論は、概念の定義よりも根拠づけに重点が置かれ、特に循環論を避けることが最大の課題となっており、300年前の人も循環参照に悩まされていたのか…と感慨深くなった。2024/11/29
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