内容説明
精神科病棟の看護師たちは、夜な夜な患者をもてあそび、笑っていた。
彼らはごく普通の「いい子」たち......のはずだった。
2020年3月、兵庫件神戸市西区の精神科病院「神出病院」の看護師や看護助手ら6人の男が患者への虐待容疑で一斉に逮捕された。看護の道を志して集まった彼らは、なぜ卑劣な犯行に手を染めたのか。閉ざされた病棟ではいったい何が起きていたのか。全国で相次ぐ同様の事件の背景には何があるのか? 地元紙神戸新聞の取材班が事件とその背景に迫る!
目次
プロローグ 押収したスマホから事件発覚
第1章 逮捕後も晴れない疑惑
第2章 虐待を育んだ負の連鎖
第3章 精神科病院で何が起きているのか
第4章 “普通の人”が虐待加害者になる時
第5章 誰も正義の味方にはなれない
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ma-bo
93
2020年兵庫県神戸市西区の精神科病院「神出病院」の看護師や看護助手ら6人が患者への虐待容疑で一斉に逮捕された。閉ざされた病棟で何が起きていたのか。地元紙神戸新聞の取材班が事件とその背景に迫ったルポ。 神出病院では看護師の別件で猥褻行為をして押収されたスマホに残った動画から偶々判明した虐待の事実たが、相次ぐ精神科病院での虐待報道があり氷山の一角であるのだろう。当時の委員長が「行くところがない人を預かっている、ご意見は?」との発言。その価値感、医療観が温床か。本書は神出病院虐待事件の詳細だけでなく、日本の↓2025/02/14
アキ
93
精神病院は閉鎖された空間であり、社会に出ることが困難な知的障害や精神障害を管理するのに、なめられたらあかんという職員の意識が働きやすい。神出病院の虐待事件は、2020年看護師や看護助手ら6人の男が口に出すのもおぞましい虐待により逮捕されたが、ビデオがなければ証拠不十分で起訴も出来なかったかもしれない。本書は神出病院虐待事件の詳細だけでなく、日本の精神医療150年の歴史と利益重視の民間病院が担ってきた役割、集団においての虐待の要因、日本人の障害者への偏見の理由についても言及していて読み応えがある。2024/12/21
ナミのママ
86
2020年神戸市の精神科病院「神出病院」の看護師・看護助手他6名が逮捕された。容疑は病棟内での監禁や準強制わいせつ。さらにその後の調査で少なくとも27名が84件の虐待を行っていた事が発覚する。現在も診療を続けているこの病院で何があったのか。事件の詳細、院内の体制、集団心理、精神科の特性が丁寧に調べられている。しかし事件後も他の病院での同類事件は続いている。「神出病院」は改革したが、逮捕されず退職した従事者はどこで何を思い働いているのか。神戸新聞連載記事は【第28回新聞労連ジャーナリズム大賞】受賞2024/11/23
fwhd8325
74
冒頭から、かなり気分の悪い内容でした。それは、現実に起きたことで氷山の一角とも言われています。そこに働く人がそうさせてしまったのか、その環境が人を変えてしまったのだろうか。事件の舞台となった神出病院の背景に、政治家の名前が度々登場するところにも、日本社会の闇を感じてしまう。何物かに操られているかのような闇を感じます。そして、その闇が蔓延し、救っているかのような恐怖を感じます。2024/12/09
sakai
40
閉鎖的な空間で起こる日常的な虐待。周りの環境に染まって、いわゆる「普通の人」でもひどいことをしてしまうという状況は、頭ではわかっていたが、実例を目の当たりにすると、本当に身近にも起こりうることだと思い恐ろしくなる。本作は「凄惨な事件が起きた」で終わらず、その後この病院が立て直るまでもしっかり書かれており、その部分は会社という組織に身を置く自分でも共感できることや勉強になることがたくさん書かれていた。おすすめ。2024/07/22