内容説明
「おばあちゃんを悲しませたくないので殺そうと思いました」。非行少年の中には、時にとてつもない歪んだ考え方に基づいて行動してしまう者がいる。しかし、そうした少年でも「幸せになりたい」という思いは共通している。問題はその「幸せ」を求める方法が極めて歪んでいることであり、それは非行少年に限らないのだ。彼らの戦慄のロジック、そしてその歪みから脱却する方法を、豊富な臨床例と共に詳述する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
147
人は誰も幸せになりたいと望む。しかし幸せになる方法を考える際に、認知機能が歪んでいると自分や周囲に逆に不幸をまき散らす。非行少年だけでなく普通の人であっても、思いがけぬ歪みがひそんでいて異常な事態を招くのだ。その歪みとは何か、多くの実例を怒り、嫉妬、自己愛、所有欲、判断の5つの視点から分析し、どうすれば巻き込まれず問題を解決できるのかを考えていく。そんな人からはひたすら逃げてきた自分だが、著者の提示する問題解決の手順を知っていれば人間関係の苦労が減っていたか。生き方の上手下手は、まさにこの点かもしれない。2024/08/18
こも 零細企業営業
46
自殺する前に、自身が死んだら悲しむ婆さんが可哀想だから殺そうとする。苦労させた母にプレゼントを買いたくて、詐欺の受け子になる。そんな歪んだ認識を基にして幸せになろうと行動する。それが犯罪であり、自身を愛してくれる人をより悲しませる。でも、そうなるとは想像できない。でも、その認識のズレ。自身にもあるんじゃないかと戦慄してしまう。“人の振り見て我が振り直せ"そう思いながらも、そうかもと思った事をしないように気をつけないと。幸せになろうとするか、、「皆んなで幸せになろうよ。」と言った後藤警部補を思い出した。2024/07/24
Kanonlicht
45
つい最近も、妻と3人の子を殺した男が「母親が死に、父親が捕まったら子どもたちがかわいそうだから」と供述したけれど、そうした身勝手な行動を起こす人の思考のメカニズムについて語っている。この犯人の場合「苦難のなか生きるより、死んで楽になるほうがいいだろう」と思い込み、子どもたちの考えなど一切気にしていない。著者は教育者の立場から、そうした傾向にある人たちをどう軌道修正してあげればいいかを説くけれど、誰からも指摘されないまま普通に社会生活を送っているなかにもこうした人が大勢いるんだろうなと考えると、本当に怖い。2024/08/01
のり
25
シリーズ第三弾。犯罪を犯した人も犯してない人も、結局は「幸せになりたい」という気持ちが根底にあるということ。ただし、認知が歪んでいると、犯罪行為に繋がってしまうこともある。誰もがちょっとした認知の歪みで、加害者側になってしまう危険性を孕んでいることに気づき、ハッとする部分もあった。相手に過度に期待すると、思い通りにならなかった時に怒りを感じてしまうという例は、自分も思い当たることがあった。2024/08/29
harumi
18
自分も認知が歪んでいるかなと思うことが時々あり、そういう時にどのように対処すればよいかのヒントがたくさん書かれている。特に「怒り」をコントロールするのは難しく、「自分が軽んじられていると感じること」や「行き過ぎた正義感」が怒りの発端になることが多く、本当にそうなのか自分に問い直すことが冷静になる一番の方法だと思った。「幸せにならないといけない、なるべきだ」というのも固定観念で、それにとらわれ過ぎると生き辛くなる。不平不満などうっちゃっておけばいい、あるいは不平不満と仲良く生きてゆけばいいと考えれば楽になる2024/09/03