内容説明
ある日、夫が風呂に入らなくなったことに気づいた衣津実(いつみ)。夫は水が臭くて体につくと痒くなると言い、入浴を拒み続ける。彼女はペットボトルの水で体をすすぐように命じるが、そのうち夫は雨が降ると外に出て濡れて帰ってくるように。そんなとき、夫の体臭が職場で話題になっていると義母から聞かされ、「夫婦の問題」だと責められる。夫は退職し、これを機に二人は、夫がこのところ川を求めて足繁く通っていた彼女の郷里に移住する。そして川で水浴びをするのが夫の日課となった。豪雨の日、河川増水の警報を聞いた衣津実は、夫の姿を探すが……。女性が主体として生きていくことの難しさを描いた物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
295
凡庸に生きてきた儂。正直、何を言いたいのか全く分からず。主人公の衣津実さん目線で物語は進んで行って。何と無く進学して、就職して、結婚して、子供は授かった方が良いよねなんて思いながら、授からなかったらしょうがない。子なし夫婦として割り切る開幕。流される生き方をしてきて、今でもその流れのままに生きている感じなのかな。その姿勢が強すぎて。夫さんが入浴しない宣言をもやもやしながらも、ほぼ何も助言等出来ないのね。超展開で田舎暮らしに。それも流れね。最後も台風ちゃんの事も、夫さんの事も見殺し(?)の様で。どうして。2025/10/08
蝸牛
102
「義母」が頻出する小説に平穏無事の日常を見出すのは困難。おふろに入らなくなった臭い夫という設定には哀しみがついて回るしかなく、現実をしかと受け止める主人公の心情をそのまま書き表す小説に圧倒された。余談。最近は洗濯に使う柔軟剤臭が香害扱いをされていると聞いているけどにおいってある種の正気かどうかの判断基準になるんだとも思った。2024/09/20
ケンイチミズバ
99
ある日突然、夫がお風呂に入らなくなるという不条理と向き合う妻。夫は臭くなってゆきますが、虫にはなりませんが、カフカの変身も少し連想しました。これがもし、事故などで普通のことができなくなったパートナーの面倒を見ることに直面したと置き換えてみると、どうだろう。長く生きていれば、日常から非日常に直面することは少なくないと思う。私がもし、この妻の立場ならいっしょに暮らすことは・・・お風呂に入らないことくらいでも耐えられないし、寛容になれない。作品のテイストがこの方らしいというのは当たり前ですが、個性が際立ってる。2024/07/05
JKD
97
都会育ちの夫が突然風呂に入らなくなった。という変なくだりから始まる。地方育ちの妻は夫婦の問題なので自分たちで何とかしようと試みるが夫婦関係は悪くないのでボチボチと生活していたのに義母が横やりを入れてきてあーもぅ!ってなる。都会の人は文化的感性は高いのに他人への干渉はしない。だから夫も自分が悪臭を放ってもあまり気にしない。一方で地方出身の妻はそれが許せないが許してしまう。解説を読んでこの物語が整理できた。「持ち堪えながらも生き延びてしまう残酷さ」というフレーズが最後にグッときました。2024/06/12
みねね
55
非常に辛い読書体験だなぁ。これをうまくマイルドにできたからこその芥川賞だと思った。/数十年前には(数日)風呂に入らないなんて当たり前で、真夏なんかそのにおいどうしていたんだろうと思うことが多いが、きっとそのためのタバコだったのかなあなどとマイルドに考えていられるのは全部過去の他人事だからだ。今作は全部を全部背負い込みすぎていてほんとうにしんどい。結局そんな考え方から逃げられない、救いのない終わり。他人の評価も自己評価も参考意見で、本当の自分なんて近似としてしか捉えられないっていう諦めは大事なんだろうなあ。2024/10/20
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