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内容説明
しばしばフランス革命は、「自由主義」「社会主義」「保守主義」の三つの思想を生みだしたといわれるが、「保守主義」を欧州に残して、「自由主義」はアメリカへ、「社会主義」はソ連へ引き継がれたと見なしてよいだろう。この両国はその後それらのイデオロギーを世界に普及させることを目指すのだが、そうした志向の根底には『旧約聖書』の終末論が潜んでいた。『旧約聖書』によると、歴史の最終局面では世界は破滅し、その前(後という説もある)に至福のユートピアを迎える。この終末論に基づく歴史観が、「神」が姿を見せない現代においてもアメリカ・ロシアを突き動かしているのだ。本書では文明論の第一人者が、歴史の深部にある『旧約聖書』の影響力、さらには文明の「根源感情」を論じ、現代を捉え直す。巻末には『人新世の「資本論」』の著者斎藤幸平氏との「保守×左派」対談も収録。「どうして日本人はこんなにも資本主義が好きなのか」という問いや、マルクスについての疑問、資本主義に対して半身で構えるための「コモン」などについての議論を展開する。 ●承認欲求がやがて対等願望に ●ユダヤ教の「他民族への優越」が受け継がれた ●歴史の四層の構造 ●「市民的資本主義」と「ユダヤ的資本主義」 ●ヨーロッパの根源感 ●ロシアの「終末への熱狂」 ●支配されるものの知恵――イギリスの保守主義とは
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
48
【「神なき時代」である現代文明の背後にも、依然として「神ありき時代の痕跡」をみる】文明論の第一人者が、歴史の深部にある「旧約聖書」の影響力、さらには文明の「根源感情」を論じ、“欲望まみれ”の現代を捉え直す書。斎藤幸平との「保守×左派」対談も収録。「まえがき」で著者は、<本当のところ、われわれは、ロシアやウクライナ、それにロシアと西欧の確執をどれだけ分かっているのだろうか。「西側諸国」とは何なのか。「自由と民主主義を守れ」というが、それが何を意味するのか、われわれはまともに考えたことがあるのだろうか>と。⇒2025/03/22
みこ
17
冷戦とはなんだったのか。冷戦後の世界が向かう先とは。宗教対立の根幹にあるものとは。あまり自分が考えたこともなければニュースなどを通じて触れることもなかった話題なので新鮮味たっぷり。同時に現代日本のように割と明確に格差はあるのに、それを世の中こんなものと受け入れでもしない限り人々の対立や争いは消えることはないのかなとネガティブな読後感を持つ。2024/07/20
tetsu
16
★5 ロシアのウクライナ侵攻をもう一段深いレベルで理解することができる。この本を読むと、西ヨーロッパ、中東、ロシア、アメリカについて歴史的背景から現在の動向がよくわかる。この著者の最新の本をぜひ読んで見たい。2025/02/28
タカナとダイアローグ
16
保守思想って、屈託なくイノベーション人材とか改革とか叫んでいるような恥ずかしい人間にとっては価値がないとみられているかもしれないけど、最重要思想だと思う。そんな佐伯先生が紐解く世界史。佐伯史観って言ってもいいくらい体系だっており、フクヤマ、ハンチントン、シュペングラーが出てくると安心する。過去の著作にはない、スラブ民族の特殊性を分析する意図があり、15世紀ころから大国だらけの隣国に争っていたり、フロンティア先がシベリア方面だったりするらしい。メシアニズム、終末論が根底にありながら、西欧社会とは違う精神。2024/09/30
KAN
13
継続中の読書が多くなってきた中で、久しぶりの読了本。5日間ほどで読み終える。著者は一貫して民主主義の限界を訴えてきているけど、次に来るものを提示しているわけではない。むしろそれはグローバルな価値観ではなく、各国・民族にゆだねられているのであると、いう読み方もできるかと思う。旧約聖書・ユダヤ教的価値観が西洋の作り出した民主主義・グローバリズムの根底にあるということは納得できるものでした。2024/07/23