小山さんノート

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小山さんノート

  • 著者名:小山さんノートワークショップ
  • 価格 ¥2,640(本体¥2,400)
  • エトセトラブックス(2023/06発売)
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  • ポイント 720pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784909910196

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内容説明

「小山さん」と呼ばれた、ホームレスの女性が遺したノート。

時間の許される限り、私は私自身でありたいーー2013年に亡くなるまで公園で暮らし、膨大な文章を書きつづっていた小山さん。町を歩いて出会う物たち、喫茶店でノートを広げ書く時間、そして、頭のなかの思考や空想。満足していたわけではなくても、小山さんは生きるためにここにいた。

80冊を超えるノートからの抜粋とともに、手書きのノートを8年かけて「文字起こし」したワークショップメンバーによるそれぞれのエッセイも収録。

【小山さんのノートより】
働きに行きたくない。仕事がかみあわない。もう誰にも言えない。私は私なりに精いっぱい生きた。(…)私にとって、大事なものは皆、無価値になって押し流されていく。(1991年11月7日)

雨がやんでいたのに、またふってくる。もどろうか。もどるまい。黄色のカサが一本、公園のごみ捨て場に置いてあった。ぬれずにすんだ。ありがとう。今日の光のようだ。(2001年3月18日)

駅近くに、百円ちょうど落ちていた。うれしい。内面で叫ぶ。八十円のコーヒーで二、三時間の夜の時間を保つことができる。ありがとう。イスにすわっていると、痛みがない。ノート、音楽と共にやりきれない淋しさを忘れている。(2001年5月7~8日)

五月二十日、夜九時過ぎ、つかれを回復して夜の森にもどる。 にぎやかな音楽に包まれ、心ゆったりと軽い食事をする。タコ、つけもの、紅のカブ、ビスケット、サラミ少々つまみながら、にぎやかな踊りをながめ、今日も終わる。夜空輝く星を見つめ、新たな意識回復に、十時過ぎまで自由な時間に遊ぶ。合計五百十六円拾う。(2001年5月20日)

ほっと一人ゆったりと歩く。のどがかわいた。水かコーヒーを飲みたい。こんな活気のない金曜の夜、三百円もち、何も買えない。人間の人生は生きてる方が不思議なくらいだ。(2001年6月22日)

一体、五十にもなって何をしているんだと、いい年をしてまだ本をもち、売れもしないもの書いて喫茶に通っているのか……と、怒り声が聞こえそうな時、私の体験の上、選んだ生き方だと、私の何ものかが怒る。(2001年6月14日)

私、今日フランスに行ってくるわ。夜の時間をゆっくり使いたいの……。美しい夕陽を見送り、顔が今日の夕陽のように赤く燃えている。(2001年6月27日)

2階カウンターの席にすわり、ノートと向かいあう。まるで飛行機に乗ったような空間。まだ3時過ぎだ。流れるメロディーに支えられ、フランスにいるような気持ちに意識を切り替える。(2002年2月21日)

一時間、何もかも忘れのびのびと終わるまで踊ることができた。明るいライトに照らされた足元に、一本のビンがあった。冷たい酒が二合ばかり入っている。大事にかかえ、夜、野菜と共に夜明けまでゆっくりと飲み、食べる。(2002年9月28日)

五時過ぎ、十八時間の飛行機に乗ったつもりで意識は日本を離れる。外出をやめ、強い風が吹き始めた天空、ゆらゆらゆれる大地、ビニールの音。 (2003年9月7~9日)

目次

「はじめに――小山さんノートとワークショップ」登 久希子
「小山さんが生きようとしたこと」いちむらみさこ

小山さんノート
序 章 1991年1月5日~2001年1月31日
第1章 2001年2月2日~4月28日
第2章 2001年5月7日~8月21日
第3章 2001年8月22日~2002年1月30日
第4章 「不思議なノート」 2002年9月3日~10月4日
第5章 2002年10月30日~2003年3月16日
第6章 2003年7月3日~2004年10月12日

小山さんノートワークショップエッセイ
「小山さんとノートを通じて出会い直す」吉田亜矢子
「決して自分を明け渡さない小山さん」さこうまさこ
「『ルーラ』と踊ること」花崎 攝
「小山さんの手書きの文字」藤本なほ子
「沈黙しているとみなされる者たちの世界」申 知瑛

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

fwhd8325

87
小山さんは、私より一世代上だと思います。おそらく、日本の将来に希望を持ち、時には危機を感じながら若い頃は過ごしたのではと想像します。このノートでは、ホームレスになったきっかけはよくわかりません。ただ、小山さんには見えていた世界が、私には迷宮に迷い込んでしまったように感じました。辛いと言うより苦しいが本音です。日記の部分は2段組です。小山さんのメッセージです。私たちは何ができるのだろう、そして何をしたらいいのだろう。合掌。2024/01/24

とよぽん

69
高橋源一郎さんが、ラジオ番組で紹介した本。小山さんという女性がホームレス生活を続けながら日々書き残したノートの山。それを彼女の死後、有志の人たちで文書に起こし書籍にまとめたもの。ほとんどお金の蓄えもないその日暮らしの小山さんは、決して福祉や医療、生活保護などに助けを求めない。保護には干渉がついているし、福祉も医療も彼女にとって不本意な処遇や手当てを押しつけてくる。彼女はそれらに縛られない自由な生活を追求したのだった。辛い、とても苦しい読書の時間で、耐えがたい重苦しさで圧倒してくる。2024/05/08

TATA

56
文才にあふれたホームレス女性の日記。非常に特徴的な言葉の使い方だけれども、その分思いの丈をしっかりと伝えてくれる。ただ、この方がホームレスとなり同居人の暴力に晒され、さらに月日が過ぎる中、心身ともに健全さを失っていくのはその言葉使いにも露骨に影響が出ているのが分かる。この方がなぜホームレスになったかというよりも、特殊な環境下で何を感じるかということの方がある種辛辣でかつ残酷だったように思う。2024/08/26

なつ

54
友人が携わった本。SNSのように誰かに見せるために書かれたものではない日記。それを見ず知らずの私が読ませていただいていいものか…という想いが最後まで消えない内容。全て現実の事。一人の女性が実際に体験・経験してきた人生のあれこれ。だから読書中『苦しい』なんて言っちゃいけない、そんなの失礼極まりないと分かっていても、本当に苦しくて、なかなか読み進められなかった。読了後の今、そしてきっとこれからも色々な想いが私の中を駆け巡り続けると思います。読んで良かった。友人にありがとうと伝えたいです。以下コメント欄に続く。2024/03/22

竹園和明

53
超達筆なホームレス・小山さんが遺した日記。物事の捉え方、価値観が人によって違う以上、ホームレスを続ける事の是非等を論じても全く意味がない。小山さんには小山さんのイズムがあるのだ。書かれた文章を読むに、小山さんはかなりの教養をお持ちの方で、また自分の意志を尊重したい意識が強く自分を曲げてまで人と関わる事を良しとしない人。辛く苦しい毎日を送りながらも彼女はそれを貫き通し、日々を生きたのだ。涙の粒で綴ったような一文一文が読み手の心を痛めつける。しかしここには、生きる事の超然たる意味がしっかり記されている。2024/05/11

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