内容説明
五代十国時代、五王朝、十一人の皇帝に仕え、二十年余りも宰相をつとめた馮道。破廉恥・無節操と非難されたが、それは「事はまさに実を務むべし」「国に忠たり」を体現した生き方だった。その生の軌跡を鮮やかに描きあげる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kuroma831
18
唐末から五代十国の時代を生き、五朝八姓の11人の皇帝に宰相として仕えた馮道の伝記。朱子学全盛期の宋代には変節漢の代表としてボロクソに叩かれたが、乱世における民政家としての再評価を行う。伝記といっても、馮道を主眼にしつつ唐末から五代期の華北史の通史として分かりやすい。この時代は皇帝といってもその瞬間に一番強い軍閥の長が名乗るだけであり、皇帝が死ねばすぐに別の軍閥に取って代わられる。唐中期以降の節度使権力の強さが窺われる。2024/11/01
MUNEKAZ
16
乱世の世に五朝八姓十一君に仕えた宰相と言われると、どんな生臭い政治家だろうと思うが、本書を読む限りではなんともさっぱりとした人物像。著者の指摘するように「国に忠」であり、決して「君に忠」ではないところが、馮道の政治生命を生き長らえさせた要因か。優れた実務能力を持ちながらも、野心を前面に出さず、むしろ権力に対してクールに振舞うところに、皇帝たちは信頼を感じていたのかも。また馮道を狂言回しに、五代十国時代の通史としても読めるのも面白い。乱世だからこそ、馮道のような官僚的な宰相が求められたのかもしれない。2026/01/10
さとうしん
15
中公文庫版からの再読。「夷狄」の契丹を含む五朝八姓十一君に仕えたということで乱世にあって無節操、恥知らずの代表格と見なされてきた馮道再評価の書。乱世にあって人民をまもるという意志があったことや九経木版印刷の開始といった彼の功績とともに、六朝以来の貴族の没落・衰退を個別の人物のありさまによって示し、当時の節度使の幕僚がいわば影の内閣を構成していたといった指摘をするなど、中世の終わりという時代性を意識した記述となっているのが読みどころ。2024/06/13
電羊齋
14
法蔵館文庫に入ったのを機に再読。唐末五代の乱世を生き抜き、五朝八姓十一君に仕えた馮道の生涯とその時代を綴る。混乱を極めた時代の中、与えられた状況の中で最善を尽くして人民を守ろうとした意思、九経木版の印刷という文化面での功績、そして彼の人物像を多面的に描き出す。また、唐代以来の貴族の没落、節度使・軍隊の中から次代の王朝の建国者が次々と登場する有様により、中国における中世の終焉が描き出される。そして、乱世がようやく統一に向かい始めるころ、馮道がまるで役割を終えたかのように世を去ったのが印象的だった。2024/06/17
すいか
4
冒頭、馮道の出身地景城が塩の産地であるという事象を足掛かりに安史の乱から唐末の混乱を説き起こす叙述の巧みさにまず圧倒された。礪波先生、これを著した時点で院生だったというのにはもう恐れ入ってしまう。読み始めた時に訃報が伝えられたが、唐代史研究に大きな功績を残された方であった。唐末五代の戦乱期に五朝に宰相として仕えた馮道であるが、この時代の華北では政権交代があっても、先朝の文人官僚はそのまま遺留される例が多く、馮道の「国に忠なり」という意識は当時は一般的であったのではないかという印象を持った。2024/11/18




