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内容説明
「朝鮮最初の小説家」と称される著者による、日清戦争で離れ離れになった家族が運命に翻弄される様を描く代表作。七歳の少女オンリョンは戦場となった平壌で父母と離散。情に厚い日本人軍医に引き取られ、新しい人生を歩む。故郷から離れた土地では、思いがけない出会いもあり……。古典文学と近代文学をつなぐ「新小説」というジャンルに属し、かつそのジャンルを創造した、韓国文学史上の有名作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
64
日清戦争で離れ離れになった家族。母親は別離を嘆きつつも離れられず、父親は米国へ留学。娘、玉蓮(オンニョン)は日本軍医に引き取られたが・・・。果たして家族は再会できるのか?朝ドラ的新聞掲載。作者は当時の挑戦において開明派の位置にいたので親日作家と評価されているそうだ。しかし、井上家での生存が掛かって大人びるしかなかったのに日本の風習により、薄氷を踏むような生活を余儀なくされるのが痛々しい。その分、米国で人生が導かれる方が啓蒙的に描かれていると思った。後、時の政権下次第で韓国内での評価が大きく、変わってそう。2024/09/02
NAO
49
朝鮮、アメリカ、日本と別れ別れになった家族が、長い年月を経て再会する物語。序盤以降はオンニョンの苦難の日々が描かれている。苦難とはいっても、短く蛋白な文章なので、感情が籠もらない伝聞を聞かされているかのようだ。それは、『血の涙』という題とはちょっとそぐわないようでもあるのだが、あまりにも深い苦しみだったがゆえに蛋白に語るしかないということなのだと思う。2025/05/14
qwer0987
11
物語としての完成度は低いが、当時の韓国の雰囲気が感じられるし、それなりに面白い。内容はメロドラマである。指摘されているように偶然の要素が強く、展開に甘い面は目立つ。しかし李氏朝鮮時代の開化派ゆえか、祖国を良くしたいとの思いが伝わるし、儒教的価値観や不正を行う国家に対する怒りや女性の解放を願っている点は良い。と同時に解説で触れられているようにそれでも女性には奥ゆかしくあってほしいという保守的な面も見られ、著者の矛盾が感じられる点もまた興味深かった。解説は充実していて読み応えあり、こちらも満足である。2025/10/25
CCC
8
近代朝鮮小説のはしりみたいな作品。展開はちょっと連続テレビ小説っぽいなと思った。進行は早く、次々と話のステージが変わっていく。と思ったら、最後は「あれっ?」と思うような終わり方。連載途中で制作中断したらしい。惜しい。話の主軸は苦難に遭いながらも少女が成長する話。啓蒙色も強い。しかしそれも含めて時代要素が強く、そちらに着目しても読める。ただその場合、話展開の軽さや、日本が朝鮮式に書かれているところがあるなど、細かい部分が気になるかもしれない。当時の朝鮮における開明派的な立場の視点は伝わってくる。2024/08/30
刳森伸一
6
近代韓国文学の原点とも言うべき作品とのこと。ドラマチックな物語と要所要所で光る洞察が面白い大河的な作品で、当時に既にこのレベルにあることに驚く。ただ、その一方で「血の涙」という重々しいタイトルの割には軽い文体とご都合主義的な展開には草創期の粗を感じずにはいられない。2024/07/29
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