内容説明
明治末の北海道札幌、主人公・野村悠紀子は、文学を愛し、空を眺めることやリンゴ畑に出かけることが好きな女学生。彼女は人から多くの関心を持たれる一方で、偏見、勝手な噂、男子学生からの執着、決められた結婚、家族の無理解などに悩む。そんななか内地の親戚の家に行くことになるが…。北海道の自然も美しい、著者の半生を反映した1940年刊行の傑作少女小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nami
20
北海道の澄み渡る空気と雄大な自然、冷たい風に揺れる小さな花、一面に積もった雪、透き通った氷柱...殆ど雪の降らない地域で育った私にとっては別世界のように美しい憧れの光景のように思えるけれど、そこに一人立つ本好きな少女の孤独を思うと、胸がきゅっと締めつけられる。文学を愛するが故に「不良少女」と嘲られ、家族には望まない結婚を強いられ、従順に生きた方が楽ではあるけれど、愛してやまないものに対して愛していないと嘘を吐くくらいならば孤独の道を選ぶ。そんな悠紀子の真っ直ぐな生き方に惚れ惚れとしてしまう。2024/10/24
たいこ
15
森田たまさんを読むのは初めてだったけど…今回はあまり好きになれなかった。利発で多感な少女が歓迎されなかった時代に、私は私の人生を自分で選ぶ!という気持ちはよくわかるんだけど、どうにも自分のことしか考えてない甘々のお嬢ちゃんにしか見えず。しかもこれがほぼ自伝と聞くと、自分の少女時代をこんな風に自画自賛できるのすごい…と思ってしまいました。好きになれない朝ドラの主人公パターンに近いかも。2024/04/14
taku
14
あとがきを読むと、分身を通して少女時代を回想した小説と言えるようだ。自分の筋を曲げたり、仕方がないと諦めてもそこで終わるわけじゃないから、自分のままでよかったのだと痛みと甘さを噛みながら認めているような味わいがある。主人公は真面目だけど当時の規範を受け入れていない。周囲が国家のジェンダーロールに組み込まれていくなかで異を感じ、小説を読んでいたら不良になるなんて価値観の世で文学好き。家族の態度や男たちの自分への接し方は、その後の心情にも大きく影響するだろう。明治末の札幌、街並みや風景を想像してみる。2025/04/03
うちだ
12
個人的にはとても面白い作品でした。半自伝的小説とのことですが、解説を読む限りほとんどの内容が、著者の森田たまさんの身に実際に起きたできごとのようです。思春期ならではの妙な自尊心の強さを持つ主人公の悠紀子。ハムエッグが上手に食べられなくて落ち込むところとか、嫂の栄子さんににめっちゃ怒られた挙句に責任転嫁までされてギャン泣きするところとか、かわいいなあなんて思いながら見ていました。明治末期の話だと思いますが、その頃の北海道の空気感が味わえたのも良かったです。2024/08/14
きょん
12
北海道の自然を背景に本を愛し、感性豊かな少女時代を過ごす主人公。しかし明治という時代はささいなことで噂を立てられたりレッテルを貼られたり、家族にまで非難されることもある。現代から思えば本当に生きづらい時代だったのだと思うが、そのなかでも自分らしさを失うまいと生きる主人公のたくましさ。誰にも頼らず1人で生きるのだと決意を決めるその清々しさ。「誰からも離れて、たった一本、山の頂に咲いている桜の花のような女になろう」2024/03/11
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