内容説明
神道のはじまりより遥かに古い、大規模神社の真の起源を知りたい。元新聞記者の著者は鎮座地の〝大地の履歴〟に着目。たとえば光り輝き、役立つ道具ともなる鉱石の産出。たとえば湧き出る清水、温泉。そして巨岩。火山帯ゆえに表情豊かな列島に暮らした旧石器人・縄文人がそれらの神秘に出会って何を感じたか。聖地と二大構造線の関係は? 現地調査と考古学、神話を網羅した史料探求による綿密な考察は地歴ファン必読。「目からうろこだった」と読者から絶賛された『聖地の条件』を改題して文庫化。
※本作品は2021年8月に小社より刊行された単行本『聖地の条件 神社のはじまりと日本列島10万年史』を文庫化に際し、加筆修正を行い改題したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
miel
27
これはなかなか興味深い作品、楽しく読み進めた。出雲を軸に、諏訪、伊豆、熊野、阿蘇と、天つ神ではなく国つ神が活躍した地域をフィーチャーし、土地独自の宗教観と遺跡の関連仮説を立て考察する流れが好み。キーワードは、黒曜石をはじめとする鉱石。専門家ではない著者だからこその易しい古代史、日本神話の解説と地質学の紐付けも良かったのだと思う。学術書や専門書にはない柔らかな語り口だからすっと入り込めるなだろう。本書にも登場した井沢元彦の著作がなかなか読み進まない私には、こちらを先に読んで正解だった気がする。2024/05/26
kk
25
図書館本。以前読んだ『聖地の条件』の文庫化版。「出雲大社、熊野本宮大社、諏訪大社など歴史ある神社の背景には、火山列島に特有の大地の恵みがかかわっているのではないか」という問題意識の下、各地域における火山、活断層、鉱物資源、海面変動などに着目し、考古学と神話と自然史の狭間を洗うようにして、聖地が聖地たる所以を探る試み。ひいては、我が国固有の信仰の形や、日本人の感性の深層に迫ろうとするもの。kk にはことの当否を判断できる知見はありませんが、列島いにしえの風景に楽しく思いを馳せることができました。2024/12/12
えとろん
17
伝統的な神社が火山、温泉、断層の近くに存在することを述べている。古代人の自然に対する感受性について考えさせられた。2024/10/19
Nao Funasoko
11
神社の起源を地学的に考証していく本書。アカデミックな論文ではないので推論や想像もあるがその分、 読みやすくもあるし、なるほどなぁと頷ける部分も多々あった。以前読んだ『縄文神社』とは異なる視点で興味深かった。2025/06/26
coldsurgeon
9
活断層やプレートの運動とし起きる地震や、火山の活動を、古代人は、神々の怒りや不機嫌と考えていたのかもしれない。乱暴で荒々しい荒魂が自身などの災害とすれば、親切で温厚な和魂は、大地がもたらす恩恵であろう。黒曜石、翡翠などの貴石を古代人は広域交易に用いた。出雲、熊野、諏訪、伊勢などの地に、神社を祀り続けた秘密が、それらにあるようだ。大変興味深い話だった。2024/08/16




