内容説明
僕らの力の源泉は何か。音楽そのものではないか。僕たちは日本の音楽のアイデンティティーを世界に示したかったのだ。
教科書にも載っている国民的愛唱歌「翼をください」で知られ、数々の個性的な名曲で歌謡曲に新風を吹き込んだ作曲家が、デビュー間もない24歳で音楽出版社「アルファミュージック」を旗揚げする。高校生だったユーミンの才能を見出し、今や世界の若者が「シティポップ」として注目する質の高い楽曲やコンセプトアルバムを次々と世に送りだし、アメリカのレコード会社と契約を結んで、YMOの世界進出を成功させる。その多面的な活躍を貫く「村井邦彦」の美学の源泉が、本書の此処かしこから顔をのぞかせる。
80年に及ぶ半生の時々の出来事を、カメラで活写するようにつづった自伝は、新しいカルチャーの勃興期に誰と誰が出会い、そこでどのような化学変化が起きたかがみずみずしく描かれており、時代を経ていささかも古びることはない。平成から令和にかけて登場したミュージシャンにとって、あたりまえのスタンダードが実はいかに新しく過激なものであったか、そのことを新たに発見する書になるであろう。あこがれからではなく、最初から等身大で欧米とフランクに向き合えた人たちが生み出した日本の音楽のアイデンティティーが、ここにはある。
目次
I 僕の履歴書
音楽を信じる/両親/北千住の家/暁星/波野君
ジャズ/慶應大学「ライト」/野尻学荘/キャンティ
ドレミ商会/作曲家デビュー/GSブーム/わずか10日で12曲
パリで音楽出版社起業/米国でも契約/ヤマハとガミさんと赤い鳥と
スタジオA/ユーミンの「ひこうき雲」/「翼をください」
勝新太郎監督の映画音楽/「美しい星」
アルファの名盤/A&Mというパートナー/YMO
檻から出て自由に/同窓会ライブ/
家族とともに
II パリの思い出
初めてのパリ
「マロニエの花が言った」のパリ
ショーが「はじめてパリを見た日」
バークレイ・レコードの仲間たち
「スワンの恋」と「パリよ、永遠に」
永井荷風とノルマンディー
モンパルナスのラ・クーポール
ミシェル・ルグランの夢を見た
「ふらんす物語」に描かれたキャバレー
さよならパリ
III 忘れえぬ人びと
アーメット・アーティガン
古垣鐵郎さん
辻静雄さん
梁瀬次郎さん
IV YMO前史
すべては「スタジオA」から
エイブ・ソマーとルー・アドラー
ハリー細野の「イエローマジック」
僕が知らなかった誕生秘話
日本の音楽のアイデンティティー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
O-chami
naok1118
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