内容説明
美はいかに人を自由にするのか。
18世紀ドイツの国民的詩人であると同時に哲学的医師でもあったシラーは、同時代の唯物論的・機械論的な人間観と対峙しながら、美や芸術による人間性の彫琢を目指した。その思想の全貌に迫るシラー研究の決定版。
18世紀ドイツを代表する思想家であり「群盗」で名高いフリードリヒ・シラー(1759-1805)は、医学、人間学、歴史、哲学、美学、文学といった多様な分野で活躍した。本書は、哲学的医師としてのシラーの歩みに着目し、「人間の自由」をめぐってシラーが紡ぎ出した思考の全貌を明らかにする。
シラーは、初期思想形成期からその思索の頂点と言える『美的教育書簡』(1795)の成立に至るまで、身体的自然のみには還元することのできない精神の自由な活動を保証し、自己形成を促進しうる媒体とは何かを考究し続けた。その「人間」研究の軌跡を辿り、有用でないものとして周縁に追いやられがちな文学や芸術、文化が人間の「自由」に果たす役割と可能性を追究する。
目次
序 章 美はいかに人を形成するか
第一部 哲学的医師シラーによる「人間の使命」の探究
第一章 十八世紀ドイツの人間学
第二章 人間は機械か有機体か
第三章「人間の使命」のアポリアと新たな自律の原理
第二部 歴史と人類の使命
第四章 「自由と人間性」への移行としての歴史
第五章 歴史と文学の狭間での人間形成構想
第三部 「美的仮象」の条件と役割
第六章 「哲学する時代」における文学の使命
第七章 近代人のための芸術構想
第八章 美はなぜ「移行」を可能にするか
第九章 「美的仮象」の条件
結論 文化という陶冶空間と自由
注
参考文献
索引



