内容説明
世界一の人口、急成長する経済、世界最大の民主主義、グローバルサウスの盟主……国際舞台で存在感を増す「大国インド」。だが、足元では権威主義化が急速に進む。2014年にナレンドラ・モディが首相に就任して以降、権力維持・拡大のために、実態と離れた「大国幻想」を振りまき、一強体制を推進しているからだ。本書は、政治・経済・社会・外交に至るまで「モディ化」が進行するインドの実像と問題を冷徹な視点から描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
68
インドは最大の民主主義国であり、急成長している新興国であるという考え方は幻想であると批判している。モディ首相の「神格化」や「ヒンドゥー至上主義」による宗教暴動などさまざまな問題が指摘されている。コロナ禍でのロックダウンも失敗と言えるものだが、イメージと現実はかなり異なっているようだ。今後「大国」という幻想を持つインドはモディ首相のもとで「自分ルール」を打ち出してくることが懸念される。このあたりはロシアや中国と同様に西洋ルールに反する考え方が出てくる可能性があり、冷静な判断が求められるところだ。2024/09/27
R
51
現代インドの状況の一つの面を見ることができる本だった。モディという首相のことを知らなかったので衝撃的だったけど、辛辣に一方的な評価のようにも読めるのでうかつに判断できないけども、世界の一つの潮流として、独裁者めいた人が望まれているのか、あるいは出世しやすい世の中になっているのかもと思わされた。インドという国について正しい知識がないのはまさにその通りだと思うのだが、理解に一筋縄ではいかないところも多そうで、やはり不思議の国だと思う。2025/06/12
鮫島英一
34
フォーリン・アフェアーズ・リポートで指摘されてきた点と、ワールドニュース内で放送されていたインド「NDTV」やシンガポール「CNA」で映し出す視点で感じていたインド像への疑問をうまく説明していると思うが、知っていた以上に酷い実情はモディ政権樹立前の記述で、政権樹立後については知識捕捉以上の評価はできない。最も触れて欲しかったのは国際評価を巧み使いわけている記述。「ビジネスのしやすさランキング」ではなく「もうすぐGDP世界3位」と叫ばれる姿が虚像かを主張してほしく、疑義がある以上の記述がないのは残念だった。2024/08/29
kan
27
右傾化がグローバルトレンドと言われて久しい。インドのモディ化、民主主義を標榜した権威主義国家化の実態がよく理解できた。2023年G20議長国の立場を最大限利用し発信すると同時に、国外向けにはグローバルサウスの代表と印象付け途上国の連帯を呼びかける戦略や、ロシアと連携しながらアメリカを牽制し取り込もうとするバランスはさすが。モディのbear hugには気をつけろ、と国際政治経済のスクールの先生が数年前に言っていたが、本書から、小国の首脳とはハグしないというデータがあると知り、あからさますぎて笑ってしまった。2024/09/14
kuroma831
23
巷で話題になっていた新刊。モディ政権下の直近10年で民主主義が後退し、権威主義化が急速に進むインドの政治情勢を描く。グローバルサウスの盟主として、「急成長を続ける新興国」という経済についてのイメージ、「普遍的価値を共有する戦略的パートナー」という外交・安全保障についてのイメージが、もはや作られたナラティブでしかないことが大量の物証と共に語られる。いやーすごい本だった。2024/05/30