内容説明
人気お笑い芸人、初の中編小説集
柚木麻子さん絶賛!
「勇気を出して誰かの心にふれてみた時の手触り。心にさわられた時のかすかなざらつきと温度。どうしてこんなに思い出させてくれるんだろう。この本がどうしようもなく好きだ。」
人気お笑い芸人にして注目の著者の初の中編小説集。
「黄色いか黄色くないか」
高校生の頃からお笑いに魅せられて、お笑いライブハウスに就職した主人公・唯(ゆい)。ある年末年始、賞レースが集中して芸人の悲喜こもごもが色濃くあらわれる、その季節に繰り広げられる、華やかな「笑い」の舞台裏の人間ドラマに迫る。
「かわいないで」
高校の日本史の授業中、千尋は必死に耳を研ぎ澄ます。隣席の香奈美がひそひそ声で後ろの席のふたりに語る、昨日のデートの一部始終に。千尋がどうしても聞きたいのは、聞き手の透子から香奈美に放たれる「かわいないで(笑)」という絶妙な相槌の一語なのだ。誰もが覚えのある、教室内で織りなされる関係の機微を見事に浮かび上がらせる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
59
【劇場を出る頃には、来た時より少しだけ、本当に少しだけ、人生そんなに悪いものじゃない、と思っている】表題作と、“芸人をテーマにした小説がたくさんある中で、私にしか書けない話はないだろうか”と考えた末に書いたという、高校の頃からお笑いに魅せられ、お笑いライブ劇場に就職した女性が主人公の「黄色いか黄色くないか」を収録。<劇場は、温情で来てもらう場所ではない。突き動かされるように、誘われるようにして足が向かうのだ。まるでここにたどり着いたのは必然だったかのように。抗うことのできない運命だったかのように>と。⇒ 2024/09/23
ひめか*
38
何てことはない些細な日常を綴る2編。お笑い大好きでライブハウスに就職した唯を巡る人間ドラマ「黄色いか黄色くないか」。自分をお笑い好きにさせた友達がお笑いから離れて子供産んだりしているの、妙にリアルに感じる。芸人さんとの会話も現実にありそう。授業中にひそひそ話す女子たちに聞き耳を立てる「かわいないで」。千尋ほど分析はしなかったが、私も比較的大人しい方だったので、教室でうるさい女子たちの会話に聞き耳を立てる場面がなんだか懐かしかった。女子校で彼氏が居る子は大人に見えたな。私はたえちゃんの方が仲良くなれそう。2024/11/19
えも
28
お笑い芸人さんによる2編。それぞれ、お笑いの劇場に勤める女性と、お笑いの視点でクラスメートの会話を聞いてしまう女子高生が主人公▼最初の話は、売れっ子になって劇場を去る芸人と、売れなくて解散する芸人の対比が切ない。主人公が高校時代、家庭環境のやりきれなさを忘れるために親友と劇場に通っていた、その切なさともカブっている。思いを口に出して伝えることの難しさも▼次の表題作は、女子高生の友だち関係の危うさが描かれているが、むしろ印象に残ったのは、お笑いのセンスがある人の、言語感覚の鋭さみたいなところでした。2024/08/25
gtn
26
「黄色いか黄色くないか」の一篇。劇場スタッフは、著者がモデル。Aマッソ加納が、自身を俯瞰していることが分かる。「フルコクミン」と「時雨」をめぐる勝ち負け論、劇場から売れっ子がテレビに去っていく寂しさなどは、体験談と言っていい。体験ほど説得力のあるものはない。2024/07/07
桜もち 太郎
18
お笑い芸人Aマッソ加納愛子の中篇2作。「黄色いか黄色くないか」は、芸人ライブ劇場に勤める女性の物語。プロットがしっかりしていて読みやすい。「芸人はみんな、あの稲妻のような快感を追い求め続ける中毒者」というくだりは良かったかな。表題作は女子校での何気ない会話が中心の物語で、まとまりがなく深みもなかったかな。少し残念な一冊だった。すみません。2024/09/21