内容説明
カフカは完成した作品の他に、手記やノート等に多くの断片を残した。その短く、未完成な小説のかけらは人々を魅了し、断片こそがカフカだという評価もあるほど。そこに記されたなぜか笑える絶望的な感情、卓越した語彙力で発せられるネガティブな嘆き、不条理で不可解な物語、そして息をのむほど美しい言葉。誰よりも悲観的で人間らしく生きたカフカが贈る極上の言葉たち。完全新訳で登場。(解説・頭木弘樹)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
184
断片という未完成の魅力。「言葉は、登るのが下手な登山家であり、掘るのが下手な採掘者だ。山の高みからも、山の深みからも、宝をとってくることはできない」「すぐ隣にいる人までの道のりが、私にとっては、とても長い」など、カフカの不安·孤独·皮肉な気持ちが伝わってくる。そんな珠玉な言葉たち。2025/08/20
佐藤(Sato19601027)
117
刹那的で絶望的なカフカの嘆きが聴こえてくるようだ。頭木さんが訳したカフカの断片集。カフカが思い、言葉にしようとして、呟き始めたのだけれど、途中で諦めたような、そんな言葉のかけら。例えば「うまくいかないことは、うまくいかないままにしておかなくては。さもないと、もっとうまくいかなくなる」のようなあるあるや、「わたしがふれるものは、壊れていく」とか「隠れ場所は無数にあるが、救いはひとつしかない」のように哲学だったり、ネガティブな思考から生まれた言葉。編者が解説を加えていないので、想像力を働かせて読むのが楽しい。2024/09/20
優希
80
カフカが残した作品以外の断片でした。小説のようなかけらたちは私を魅了しました。断片にカフカらしさが感じられるからです、不条理で不可解で美しい世界観。弱くて繊細だからこそのものなのですね、極上の断片を贈られたような気分です。2024/06/17
やいっち
76
ある物語が始まる。始まりもなければ終わりも見えない。そもそも語り手が誰なのかも定かじゃない。じゃ一体誰が語ってるんだ?語り手がいてこその物語だろうが。まさにそこなのだ!この〈物語〉の難しいのは。語り手とやらが居るには居るが、常にどんよりした、朧な意識、そう言うなれば酩酊する意識、下手な麻酔薬に溺れたような、絶世の美女と自称する不可思議な輩にとろかされたような、まあ腐りかけの林檎のような意識に揺蕩っている。2025/09/18
兵士O
76
訳者の頭木さんがカフカの魅力を解説で端的に書いています。まずスケールの大きな一大叙事詩のような作品ではなく、卑近な平凡な人間の狭い世界の話を書いたこと。でもそれでいて、いやだからこそ普遍的な世界文学を書けていた。次にこの断片集限定の話だが、この未完の閉じていない断片だからこそ一番カフカの描きたかったエッセンスを描けた。カフカは断片こそがいいという批評家も多い。最後にカフカが言っていることだが、本というのは抵抗なくスイスイ読めるのがいいのではなく、何か棘が刺さるものでなければ意味がない。カフカが正しくそれ!2025/06/10




