内容説明
人は人生のそのときどき、大小様様な物語に付き添われ、支えられしながら一生をまっとうする――。『二十歳の原点』『木かげの家の小人たち』『あらしの前』『百年の孤独』。作家・梨木香歩は、どんな本に出会い、どんなことに想いを馳(は)せ、物語を紡いできたのか。過去二十年に亘(わた)り綴られた、数多(あまた)の書評や解説、そして本や映画にまつわるエッセイを通してその思考を追う、たまらなく贅沢な一冊。(解説・長田育恵)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
68
梨木さんが過去20年にわたって綴られた、数多の書評や解説、一部本や映画にまつわるエッセイをまとめた一冊。全体を読んでみて、紹介されている本は知らない本ばかりで、ものの見事に読んでいない。自分の日頃の読書の偏りを痛感させられた。内容については、読んでいないので評価しづらいのだが、文章は格調高く、豊穣な気分にさせられるもので、読んで損はなかったとの気持ちを持つ事ができた。様々なジャンルの中で、梨木さんがどんなことに想いを馳せてきたかがよく分かった。今後の著作を読むうえで、大いに参考になる良書だった。2024/06/17
tamami
53
2021年刊行の元版で読む。積ん読本のささやかな解消と思って手控えを見たら、なんと既読になっている。書評本ということで読み飛ばした故に、その時は印象に残らなかったということか。今回再読?してみて、本書の全体を通して、作家梨木香歩の拠って立つ処を強く印象づけられた。ハンセン氏病患者収容施設・長島愛生園についての記事に、小川正子、神谷美恵子という名前を目にして衝撃を受ける。世の中に絶対的な善はないのだと思う一方で、一読友さんが書いたレビューを読み、書物の中にのみ真実があると思うことの危うさも感じたことだった。2024/10/28
まさ
24
文庫本になったので改めて再読です。図書館で借りていたときはあれこれ付箋を貼っても外して返却しなければいけなかったけど、これで手元に置いて、貼った付箋と気になる本や梨木さんの見方・生き方・考え方をいつでも見返すことができる!紹介のあった本について直接読んでいなくても刺激を受けることばかりなので、これからそれぞれ読むのが楽しみ。2024/06/15
なおこっか
5
同じ時代に居てくださって良かった、と思える作家の筆頭が梨木さん。取りあげられた本の中に、須賀敦子経由で読んだアン・モロワ・リンドバーグ、沢木耕太郎経由で読んだ村尾嘉陵、池澤夏樹経由で読んだアレクシェーヴィチと、次々繋がりを見つけるようで、遅かれ早かれ絶対に梨木さんの本には出会っていたはずだとの確信をもつ。ここから更に先へ、紹介された未読の物語へ繋がってゆくだろうとの確信も。片山廣子、和田稔の名が胸に残る。芥川(贔屓作家)や小林秀雄のある一面がピシャリとやられているのも、梨木さんなら小気味よい。2024/08/13
takakomama
5
20年間の書評・評論・解説文をまとめた本。私の既読は4冊だけでした。現実をまっすぐに見つめて深く考える、静かで落ち着いた文章に、信念を感じます。著者の絵本も読みたくなりました。2024/07/12