内容説明
泥臭い野心と権威への追従――。残念に生きたその人は、いかにして巨大かつ精緻な交響曲を生んだのか? 21世紀の今、多くの聴衆に支持され、時代と響き合うに至った作曲家の実像。その生涯から場面(エピソード)を小説化、事実記録(伝記)と組み合わせたハイブリッド評伝。【ブルックナー生誕200年記念企画】
*目次より
序
第一章 出生から教師時代まで(1824-1855)
第二章 リンツでの修業時代(1856-1868)
第三章 ヴィーンでの苦難の日々(1868-1878)
第四章 遅れに遅れた名声(1879-1889)
第五章 晩年(1890-1896)
エピローグ 死後の名声
後記
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Susumu Kobayashi
11
毎日少しずつ読んでいたが、最後は一気に読み終えた。今年は生誕二百年記念ということで、この作曲家がコンサートでも頻繁に取り上げられることになったのは慶賀に堪えない。事実を記載した部分と、小説家が事実を材料に想像力を駆使した小説部分の「場」から構成されている。取り上げられているエピソードは各種の文献を網羅したもので、これ一冊あれば充分だろう。最後は感動的に結ばれている。以前読んだ福原文彦『ブルックナー伝説』を想起される。2024/12/07
ろべると
11
「不思議な姫とブルックナー団」の著者による作曲家の伝記。田舎者で教養もなく風采の上がらないブルックナーは、職と名誉を求めてウィーンの宮廷社会やリストたちのサロンに厚かましく取り入ろうとする。相手への配慮が足りず手紙では自分のことばかり書き、やたらと物を数えたがる。極めつけは、手当たり次第に未成年の少女に求婚し、激しく拒絶される。そんなヤバい初老のオジサンが、あのような天国的な音楽を生み出したのだ、モーツァルトのように。いやブルックナーは決して天才ではなく、たたき上げの苦労の末に勝ち取った才能なのだろう。2024/07/26
ムーミン2号
11
19世紀の作曲家・ブルックナーの生涯を信頼できる評伝をもとに、あるいは引用して描いていく。その間にはフィクションが挟まれるという構成は、著者の著作(『不機嫌な姫とブルックナー団』)に倣ったとかいうことだが、評伝部分には著者の評価、あるいは思いなどが極力排されているようだ。そういう構成だけど、500ページ越えの本書はなぜか最後まで読まされてしまった。天才あるあるかも知れないが、かなりの変人で、牛飲馬食が祟ったか、60台後半からは生活習慣病の見本市化した作曲家は、皮肉なことにそのころから認められ始めた。2024/07/20
どら猫さとっち
8
今年生誕200年を迎えるオーストリアの作曲家・ブルックナー。現在のクラシックファンから熱烈な支持を得て、巨大で緻密な音楽を生み出した彼は、人生は残念なことが多かった。生涯独身、作品は遅くなってから高い評価を得て、かなりの野心家。人間味溢れる神聖で壮大な巨匠の生涯を、評伝と小説で構成。それぞれの視点でブルックナーの生涯を描いているから、とても面白い。ブルックナーの音楽世界は、噛めば噛むほど味わい深い。2024/05/29
タキタカンセイ
5
クラシックは好きだけど先入観を持ちたくないからライナーノーツや評伝の類はほとんど読まない。この本は「小説」部分があると聞いて読んでみた。一昔前の喜劇の主人公のようなドジで田舎者の卑屈なおじさん(おまけにロリコン)。しかしその内面には誰にも到達できない崇高な世界があった…不遇な師匠を世に出すために「改作」を進言する弟子たちの行為が却って作品を壊してしまう皮肉。後期ロマン派の「孤島」のようなブルックナー音楽の秘密を垣間見たような気がした。関係ないけど途中からブルックナー氏の声が蛭子さんの声で聞こえてきました。2024/10/07
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