内容説明
2011年から内戦が続くシリア。政府と反政府勢力の対立を軸に、宗教や大国干渉といった問題も孕みながら内戦は泥沼化。国民の貧困化とともに670万人以上とも言われる難民を流出させたアサド大統領による独裁国家は、今世紀最大の人道危機を招いたとして世界中から問題視されている。
著者は、混迷を極めるこのシリアの現状を自分の目で見るために、一介の観光客として入国。わずか10日間の、しかもルート限定の観光旅行だったが、自ら果敢に戦下の町を歩き、地元の人々と言葉を交わしていく。国によって仕組まれた、作られた旅行ではあるが、わずかながらも垣間見えたシリアの今の姿を著者は見事に描写。なかでも悪名高きサイドナヤ刑務所で過酷な拷問を受けながらも生き延びたシリア人の話は圧倒的だ。
異色の旅行記であるとともに、多くの人に読んで欲しい問題提起の書でもある。
第3回わたしの旅ブックス新人賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buuupuuu
22
レバノンで知り合った難民の人々の故郷を訪ねようと、著者はシリアへ向かう。しかし秘密警察などに監視されているのではないかという怖れから、現地の人々と踏み込んだやり取りができないまま、旅は進む。膜で隔てられたような遠さがある。いたるところにあるアサド大統領の写真、ロシア兵、サイドナヤ刑務所という名の強制収容所、反体制運動の起点となった広場の時計台、ダマスカスやアレッポの廃墟。こういった事柄について現地の人々の口は重い。当然ながら、そこに思いがないはずがない。沈黙の重さを感じさせる旅だったのではないだろうか。2024/01/03
とりもり
5
内戦の戦禍でもっと荒廃しているのかと思っていたが、この旅行記を読む限り、そこまで徹底的に破壊されてはいないことに安堵を覚えた。とは言え、建物以上に国民の精神面に深刻なダメージを与え、何より世俗主義で様々な宗教が対立なしで並存していた素晴らしいシリアが失われてしまったことに怒りを禁じ得ない。自由旅行ではないので仕方ないが、全体に旅行記としては掘り下げが甘く、「罪深き」と言えるだけの内容はあまりない。むしろ、最後のレバノンでのアハマドのインタビューが一番衝撃的。アサド政権崩壊後の今も知りたい。★★★☆☆2025/02/03
relaxopenenjoy
4
アサド政権崩壊前にレバノンからシリアに「観光旅行」(取材や人道支援活動などではない)。廃墟の写真が痛々しいが、一部復元作業も始まっていたという良い兆しも。著者はアラビア語が分かる(&喋れる)ということであるが、現地で出会う人の思いはなかなか聞き出せない模様。日々の暮らしの不自由さ(停電とか)や宗教の話は言っても良いが、政治については言えないというのが印象的。アサド政権崩壊して今のシリアはどうなったんだろうか。2025/12/07
やまた
3
ニュースで名前だけ聞いたことのある地名、実際の雰囲気はそんななのかというのが知れた。自分の大好きな故郷に帰れないってどう言う気持ちだろうな。写真もっとたくさんカラーで見たかったな〜。最終章、シリアの刑務所に収監されていた人のインタビューが衝撃だった。2023/12/27
Yasutaka Nishimoto
2
ついに崩壊したシリアのアサド政権。日本でも評判が悪かったが、このお話は少し前のこと。旅行記でも、記者の目でもない。なんだろうと思っているうちに、読み終わってしまった。2025/02/22




