内容説明
日ソ戦争とは、1945年8月8日から9月上旬まで満洲・朝鮮半島・南樺太・千島列島で行われた第2次世界大戦最後の全面戦争である。短期間ながら両軍の参加兵力は200万人を超え、玉音放送後に戦闘が始まる地域もあり、戦後を見据えた戦争だった。これまでソ連の中立条約破棄、非人道的な戦闘など断片的には知られてきたが、本書は新史料を駆使し、米国のソ連への参戦要請から各地での戦闘の実態、終戦までの全貌を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
153
事実上は8/9からの一カ月余りの戦闘であった日ソ戦争。資料も少なく様々な憶測に塗れるこの戦いを、戦史資料に基づき冷静に分析した貴重な一冊。ソ連参戦の経緯、アメリカの思惑の変遷、満州をめぐる関東軍の戦い、朝鮮半島の防衛戦、南樺太・千島列島の占領、シベリア抑留などのテーマごとに、その事実が非常によくわかる。モンゴル方面からの機甲部隊の奇襲に狼狽する関東軍、アメリカ軍の侵攻を想定した千島列島や北海道の防衛戦略などを知ると、当時の日本が、政軍ともに、いかにソ連を軽視(=信用)していたかという背景が浮き彫りになる。2024/07/30
skunk_c
100
今まであまりきちんと取り上げられていなかったソ連参戦からの1ヶ月あまりをコンパクトにまとめたもの。様々な史料を駆使し、反証を重ね、はっきりしないことはそのように記述する著者の姿勢をまず評価したい。満洲におけるモンゴル経由の侵攻、樺太戦の詳細、そしてアメリカとの駆け引きの中での千島・北方領土占領、直後にはっきりしてくる米ソ対立もあり、ソ連の領土的野心の強さを改めて確認できた。しかし魑魅魍魎の住む大戦中の国際社会で、なぜ日本は日ソ中立条約にすがって和平工作を行おうとしたのか。「溺れる者は藁をも掴む」とはいえ。2024/05/25
みこ
79
多くの人が日本の戦争は8月15日で終わったと認識しているためか、語られることも少なく耳になじみの薄い日ソ戦争。奪えるものは奪ってしまえというソ連(ロシア)の戦争というものに対する価値観を見ると、現在ウクライナで行われていることの本質が見えてくる。北海道の半分がロシアだったかもしれないと思うと空恐ろしい。戦争の過程の中で日付を見ると無意味さ・無常さにいたたまれなくなる。ガンダムの「ポケットの中の戦争」を思い起こした。2024/09/26
楽
77
24年4月。あとがきの謝辞の相手に同窓の名前が出てきて少し驚き、喜び、また誇らしくもなった■あとがきに「日ソ戦争で流された血や涙はまだ乾いていない」とあるがその通りで、特に元道民である私自身、旧ソ連およびロシアには根強い不信が残る■日ソ中立条約を破棄し日本の敗戦後も侵攻を続けた火事場泥棒という認識は消えない■さて、本書は日米ソだけでなく、ロシアが保管する鹵獲関東軍文書も利用しており、多角的な分析を行っている。2025/01/28
KF
72
予想はしていたものの、読むのがつらい感じだった。日本の教育では「第二次世界大戦は昭和20年の8月15日に無条件降伏で終戦」と習うが、この本が取り扱うのはその事前も扱うものの、何と言っても玉音放送以後の犠牲があまりにも辛い。しかも対米戦争と異なり当時の資料が極めて乏しく、明らかに出来ていない。ソ連参戦を招いた米軍も長く、狂気に苛まれたのであろう。「この機に!」と対日戦に参戦して日本からむしり取り、中国大陸では共産党、朝鮮半島でも朝鮮民主主義人民共和国を得たのがソ連。米国にすると悔いる所もあるのだろうと思う。2024/12/08
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