内容説明
コレラ・腺ペスト・スペイン風邪…。19世紀、東南アジアで発生した感染症の流行に帝国はどう対応したのか。医療が帝国統治に果たした役割や、西洋医療と現地社会との摩擦、近代医療と市場経済の関係を考察し、20世紀にいたる東南アジア医療史をたどる。病と健康の歴史をグローバルな視点から明らかにし、現代の医療と社会のあり方を考える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
103
昔読んだ子供向け探検物語では、医師が未開の地で有色人種を風土病から救う話が多かった。科学の進歩とヒューマニズム万歳で貫かれていたが、今思えば帝国主義全盛期に欧米の植民地にされたアジア諸地域で、入植者の安全確保と先住民支配の目的があったのだ。開発と交易の進展に伴って感染症のパンデミックも多発し、統治する側は西洋近代医学による「帝国医療」を通じて白人による支配を固めようとした。しかし人手不足から養成された現地人医師が知識と管理能力を得て、後の独立運動に繋がった。医療史から見た植民地の政治経済史が浮かび上がる。2023/03/04
MUNEKAZ
17
東南アジアの植民地時代を、医療の観点から見る。著者は宗主国の行った公衆衛生対策を「帝国医療」と呼び、西洋至上主義的な上からの押し付けであるこれが、現地人を中心とした「民族医療」へと変化していく様を追う。軋轢や摩擦の絶えない話が続くが、同時に医療を通して西洋文化を学んだ現地人が、民族主義や独立運動のリーダーへと成長していくというのは興味深い。孫文やホセ・リサールも医師だったのである。また著者の専門からフィリピンの話題が多いが、スペイン→アメリカという宗主国の変更による統治体制の変わり方が見れるのも面白い。2023/05/15
くまパワー
1
新型コロナの影響で医療史研究が注目される。本書は植民地時代東南アジア特にフェリピンを中心し欧米帝国主義下のパンデミックの伝播と帝国医療の影響を議論。伝統医療から帝国医療への変化は、植民政策が草の根レベルでの伝播だけでなく、元々の宗教観や生死観の転換もあり、共存や排除することを注意。また西洋医療が現地民のエリートを養成し、医療の民族化やナショナリズム運動を関与。特に東南アジア近代のナショナリズム運動家が欧米で教育を受け、現地で医師をやってる人が多い。休み再読予定。2023/05/09
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