内容説明
卒業シーズンに歌われる定番曲の一つ「蛍の光」。明治に作られたこの唱歌には、現存しない3番と4番があった。「帝国」版図の拡大と幻の歌詞を読み解き、「蛍の光」の成立と変遷過程を「国民国家」日本の歴史の中に位置づける。唱歌教育の実態にも迫り、日本人の教化のみならず、朝鮮・台湾など東アジアの植民地支配に与えた影響を解明する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひよピパパ
12
唱歌「蛍の光」の知られざる一面を教えてくれる一書。「蛍の光」に3番・4番があったことがまずは驚き。しかもその歌詞が国を守る愛国主義的色彩を色濃く反映し、戦争による国土の拡張とともにその歌詞も移り変わっていくという歴史を持っていたとは!戦時中は曲自体がスコットランド民謡をもとにしていたばかりに歌われなくなったとも。解説がやや煩瑣な部分はあったが、とても勉強になった。2024/11/10
Go Extreme
3
モースが聴いた「蛍の光」 「蛍の光」の誕生 「国民国家」日本の成立: 『小学唱歌集』初編と「蛍の光」 『小学唱歌集』初編の成立経過 「蛍の光」歌詞の成り立ち 「蛍の光」と「国民国家」日本 「蛍の光」の拡大 「帝国」日本への道: 「ふみよむ月日 かさねつつ」―学校教育 「至らんくにに いさおしく」―軍隊と戦争 「蛍の光」も広がり 「千島のおくも 沖縄も」→「台湾の果ても 樺太も」 『小学唱歌集』 「蛍の光」の膨張 東アジアのなかの日本 「蛍の光」の崩壊 「大東亜」日本の幻想 「蛍の光」の戦後 敗戦後の日本2022/11/12
犬丸#9
1
★★★☆☆ 唄われることが無くなった3番4番の推移を追った一冊。着目はユニークなんだが、さすがに膨らしすぎかな、という気はする。堀内敬三氏の戦時中の発言は、なかなかに興味深かった。2023/02/24