鶴見俊輔 混沌の哲学 - アカデミズムを越えて

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鶴見俊輔 混沌の哲学 - アカデミズムを越えて

  • 著者名:高草木光一
  • 価格 ¥3,740(本体¥3,400)
  • 岩波書店(2024/04発売)
  • ポイント 34pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784000239066

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内容説明

戦後日本を代表する知識人・鶴見俊輔は,民主主義と平和主義を社会に根づかせる積極的な役割を果たした人と目されながら,一方でそれらに対する懐疑を抱き続けていた.日常性に根ざす思考に可能性を見いだし,「新しい知」のあり方を模索し続けた鶴見が,彼方に見ていたものは何だったのか.その豊饒なる思想世界の解読に,「いのち」をめぐって問いを積み重ねてきた著者が挑む.

目次

はしがき
序章 正義と狂気のあいだ
思想家と二つの顔
「春子」と「退行計画」
政治と文学
ハウスキーパーと日本共産党
「反・反共」と「反共」と
本書の主題
I 反戦の思想と行動
第一章 一九六九年八月・大阪城公園
1 「反博」とベ平連の危機
ベ平連の二重構造と「反博」
声なき声の会とベ平連
2 市民と土民のあいだ
「土民」対「市民」
石川三四郎の「土民生活」とデモクラシー
「市民」という幻想
3 市民運動家としての資質
鶴見と小田との不和
悪人と善人と
I am wrong
方法としてのアンビヴァレンス
4 徳永進と「らいの家」
「反博」のなかの「らいの家」
戦争が〈らい〉を解放する
戦争とハンセン病
ベ平連に対する違和感
第二章 大東亜共栄圏とハンセン病
1 鶴見俊輔とハンセン病
書かれざるハンセン病
大江満雄とハンセン病
ハンセン病問題の核心
ハンセン病の哲学
2 ライはアジアを結ぶ
アジアとハンセン病
戦中期の大江満雄──『辻詩集』
『大東亜』からアジアへ
大江満雄の戦後
鶴見と大東亜共栄圏
3 竹内好とアジア
一二月八日の感泣
アジア主義の戦後
竹内好と大東亜共栄圏
4 「交流の家」再考
戦後の「大東亜共栄圏」構想
癩者から来者へ
第三章 反戦と好戦のあいだ
1 開高健とベトナム人民
ベトナム人民とは誰か
民族自決主義のジレンマ
ベトナム戦争とは何だったのか
ベ平連解散の謎
2 戦争という愉楽
ページェントとしての戦争
開高健への共感
古山高麗雄の「反戦屋」批判
崇高にしておぞましき戦争
反戦の根拠
3 従軍慰安婦のアポリア
娼婦と慰安婦
アジア女性基金
選言命題と老年
無能力としての能力
おわりに
II 新しい知を求めて
第四章 民族主義のパラドックス
1 葦津珍彦と「非国家神道」
葦津珍彦との出会い
葦津珍彦への評価
日本的思想と日常的思想
国家神道と非国家神道
2 『夢野久作』と天皇のイメージ
一木一草の天皇制
天皇と銭湯
ドグラ・マグラの世界
ドグラ・マグラとベ平連
夢野久作と杉山泰道
3 天皇とアナキズム
ラディカル・デモクラシーとアナキズム
外典としての夢野久作
葦津珍彦のアナキズム
石川三四郎と天皇
第五章 戦後民主主義のルーツ
1 『アメノウズメ伝』への視座
石川三四郎の『古事記』研究
アメノウズメと一条さゆり
犯される側の論理
『アメノウズメ伝』と明石順三
科学と神話
2 漫才とディスコミュニケーション
『太夫才蔵伝』と大衆芸術
外来思想と伝統思想
半身性の文化
デューイ批判とディスコミュニケーション
ディスコミュニケーションとしての民主主義
3 「準国家」と戦後民主主義
デューイと民主主義
共同体への関心
「準国家」からの展望
コミュニティとアソシエーションのあいだ
第六章 ローカルな普遍性
1 『思想の科学』を越えるもの
「うち」と「おたく」
サークル文化としての『思想の科学』
『思想の科学』の原点
『思想の科学』へのアンチテーゼ
反国家、反アカデミズムの志
2 プラグマティズムの「学びほぐし」
出発点としての『アメリカ哲学』
『アメリカの革命』から『北米体験再考』へ
プラグマティズムの源流
インディアンとアルバニー連合計画
黒人解放運動とプラグマティズム
良行の失望感
3 アカデミズムと民間学
一九六九年ふたたび
大学闘争と学問の危機
「日本発」という理念
『民間学事典』のジレンマ
「女、子ども」とは誰か
「ぬるい感じ」と高き志
むすびに代えて
資料 鶴見俊輔の石川三四郎宛書簡三通
参考文献
あとがき
人名一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬参仟縁

38
母と鶴見さんが亡くなったのは2015年であった。あれから10年。。広島原爆投下の日に、T図書館より拝借。土民生活と市民生活(35頁~)。この土民生活はデモクラシーとルビがある。寝泊まりする土着の民。市民は反博覧会イベントの対応のみ(34頁)。土民は農民も含む。他人を搾取しない(37頁石川三四郎)。私は市民大学院に関わったときは、教授も、社会人研究者も、フラットな目線を意識して活動していたと思う。癩病というのは、戦争癩が軍人癩と同義で、戦中や戦後直後、よく使われたという(藤野豊、62頁)。2025/08/06

踊る猫

30
鶴見俊輔という存在をいたずらに神格化し「無辜のカリスマ」と褒め殺すのではなく、かといって後出しジャンケンの理屈で雑駁にこき下ろすのでもなく、フェアネスを貫き彼が残した仕事を読み込み為した功績を評価していく営み。そのおそるべくねばり強さが必要とされる試み(容易にわかるように「是々非々」が要求されるわけだから)を、高草木は実に手堅い筆致とアプローチで為している。ここから見えてくるのは時に矛盾や破綻を見せつつ、その内面に迷いなども抱えつつも同じようにねばり強さを以て「反戦平和」を追究し続け、奮闘した知識人の姿だ2024/10/15

Go Extreme

2
鶴見俊補の「反戦の思想と行動」 1968-69年・大学闘争ー思考転換点 「民間学」ーアメリカ哲学の相対化 1969年8月・大阪城公園: 反戦運動「べ平連」 小田実と活動・死後も思想継承 平和運動の単純な「正義」化に疑問 大東亜共栄圏とハンセン病: 理念を批判→日本国内の文化的差別 平和運動と社会的差別問題を関連付け 反戦と好戦: 反戦運動過激化と社会変革先鋭化 ベトナム戦争を批判・広範な社会的変革 戦後民主主義: プラグマティズム ディスコミュニケーション ローカルな普遍性: 歩く学問による新たな知の探求2025/02/03

tu-ta

1
PP研戦後研のテキストということで図書館で借りた。鳥取の菜の花診療所の徳永進と鶴見俊輔の関係をこの本で初めて知った。この徳永のべ平連のスタンスに対する問題提起も興味深し、開高健との関係を描く3章「反戦と好戦のあいだ」も興味深かった。返却する関係でところどころ飛ばし読み。 ここに書いたものをまとめたのが https://tu-ta.seesaa.net/article/504127545.html2024/07/25

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