内容説明
恋愛に遭遇したとき、人間の認知はいかに反応し歪みを露呈し、変化してゆくのか。耐える女の報酬、賢い女の野望、わがままな女の錯誤、あきらめない女の夢想など、オースティンが描いた6人のヒロインの言動分析から、普遍的な人間の心情に迫る画期的なアプローチ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井月 奎(いづき けい)
36
ジェイン・オースティンのすごさを書いたこの本を読了しての思いが「廣野由美子ってすごいなあ」でした。ジェイン・オースティンを読んだことのない私がなぜこの本を手に取ったのかと言うと、彼女の著作である『批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義』が素晴らしい本で、『フランケンシュタイン』を何倍にも面白く読ませてくれたのでした。この本もオースティンの、いえ小説の読み方を豊かにしてくれることは間違いありません。小説とはいろいろな読み方があることを具体的に指南してくれるのです。廣野由美子、本当にすごいのです。2017/10/05
みつ
25
オースティンの6長編読了後手に取る。それぞれの女主人公を中心に、人間のものの見方の「歪み」という点に着目し作品の深部に光を当てようという試み。中核的な認知構造「スキーマ」に基づき、無自覚のうちに生じてくる「自動思考」によって浮かんでくる不合理な考え方や否定的・悲観的な感じ方が「認知の歪み」であると著者は規定。オースティンの場合、この「スキーマ」が「家を追われる」という形での「喪失」体験と「価値の剥奪」であるとして、「制限」という性質が特徴的な彼女の小説の主要題材となると指摘したうえ、個々の作品に移る。➡️2024/01/08
あむぴの
23
『高慢と偏見』のところだけ読む。「100分de名著」と、だいたい同じようなことを書いている。2017年6月、NHK出版。2018/09/30
shoko
19
『認知の歪み』なんだか難しい言い方をされているけれど、読んでいるとなんとなくわかってくる。6作品全部読んだと思っていたのに『ノーサンガー・アビー』を読んでいないことに今更気づいてしまった。学生時代に気持ちを戻して読まなくちゃ。2017/08/16
ゆずな
16
オースティンの長編6作品の女主人公たちの行動を「深読み」する本作。いかに彼女たちの認知に歪みが生じているのか、何が原因で歪みが生じているのかを分析する訳だ。内容自体は面白いが、些か著者の語り口がオースティン主人公たちに対して批判的な要素を含むときがあって「うーん」。あとは深読み自体はとても面白いのだが、「認知の歪み」に無理やりつなげているような印象も。読めてよかった。2021/11/07