内容説明
中国から西洋へ、私たち日本人の価値基準は常に「西側」に影響され続けてきた。貨幣経済が浸透し、社会秩序が大きく変容した18世紀半ば、和歌と古典とを通じて「日本」の精神的古層を掘り起こした国学者・本居宣長。波乱多きその半生と思索の日々、後世の研究をひもとき、従来の「もののあはれ」論を一新する渾身の論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
113
私は、常々、荻生徂徠に比べて本居宣長が矮小化されている気がしてならない。正岡子規/和辻哲郎/丸山眞男各氏からの評価も著しく低い。そんな中で上梓された先崎先生の本居宣長論。宣長の原点に古今和歌集があること、和歌と統治を巡る賀茂真淵と宣長の微妙な解釈の違い、折口信夫の源氏論との共通性など、新たな気づきが得られた。著者は、もののあはれ論とは「肯定と共感の倫理学」と言う。小林秀雄氏の「本居宣長」を初めて読んだ時「本居宣長の本質は直観と想像力。美質は明るさと単純さ」との断定に戸惑ったものだが、やはりそうなのか…。2024/07/15
KAZOO
99
本居宣長についてのその生涯と彼の生きた時代についての幅広い評論です。私は本居宣長というと小林秀雄が書いた評伝を思い起こすのですが、小林秀雄のは嫌いではないのですがなんかわざと小難しく書いているような気がしてすっきりとはしなかったのですが、この本はわかりやすいと思いました。彼の生きてきた時代とその家族などの様子もよくわかります。2025/12/05
owlsoul
17
貨幣経済の普及に伴い江戸思想に二つの潮流が生まれた。一つは後の自然科学へとつながる蘭学。もう一つは国学である。近代社会を前に、人々は普遍を探究する蘭学と、自らの礎を探究する国学とに自身の拠り所を見出した。GHQの検閲対象となった国学が、その本質に政治性を持つのは確かだが、本書は国学者本居宣長の仕事を通して、それとは異なる側面を描き出す。宣長は和歌の世界に日本の礎を見た。そこには男女の恋愛、好色の営みに宿る豊饒さがある。実存を無視した僧の高潔さや武士の誇りではなく、性愛という自然の力に、国家を発見したのだ。2025/04/13
tyfk
12
小林秀雄『本居宣長』は一通り読み、子安宣邦校注の『紫文要領』『排蘆小船・石上私淑言』も読んだので、本書の冒頭と末尾以外の本居宣長に関するサーベイは、小林秀雄なんかよりはるかにわかりやすい。ただ画期的な本居宣長論という気もしないのは、折口信夫や藤井貞和の論旨を並べているだけで、古典文学に対する独自の読みや解釈があるわけではないから。今日のグローバリズムにおける日本のあるべき姿を本居宣長の可能性として語ろうとするのは強引で飛躍があるように思えるし、子安宣邦のいう「宣長問題」のバージョンなのでは。2024/11/27
ウォーカー
7
古今の多くの研究者・文学者を参照しつつ本居宣長の著作を読み解き、その思想の核心、背景や形成過程(商品貨幣経済や「西側」の普遍的価値との葛藤、契沖の影響)、方法論・思考過程(和歌と源氏物語の精読。賀茂真淵らとの違い)が浮き彫りにされる。「人情・実情」「もののあはれをしる」の意味、「恋・色好み」の男女関係や「そらごと」の価値、肯定と共感の倫理学には魅力を感じる。「日本」の読み方(やまと・にほん)・漢字の当て方も興味深い。「日出づる国」の典拠は初めて知った。宣長の思想が今の時代に持つ意味を考えてみたいと思った。2026/09/05
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