内容説明
「女が書いたものなんざ」――日本の文壇にまだ女性の書き手が少なかった明治時代。小説家になることを夢見る十七歳の宮島冬子は、当代一の文学者・尾形柳後雄のもとで女中をしながら執筆に励んでいた。同じ志を持つ男弟子たちが次々と世に出ていく一方、冬子は家事に追われてなかなか筆が進まない。焦りを感じる冬子はある日、尾形からおぞましい誘いを受けて……。女性の直面する社会的な困難を克明に描き、己の道を歩き続ける強さに胸を打たれる。現代を生きる私達に寄り添う、勇気と希望の湧き立つ傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
akiᵕ̈
24
時は明治。文壇に身を置く人たちの生き様、苦悩を描く。女性が見下されていた時代、大家先生の弟子入りにはなれず、女中をしながら自らも小説家を夢見る冬子。思うようにいかない中、先生に"お前にしかできない事“としてあまりに悍ましいことを要求されるが、書いた小説を出版社に渡すことを条件に受け入れていく。その後妊娠が分かり、弟子の1人である九鬼から提案された〈共謀〉を秘め結婚し、それぞれが己の思う通りに生き、すれ違いながらも鎧を纏ったお互いの心の内を見つめていく。冬子の強かさには、ただただ唸る。2024/04/17
陽ちゃん
7
時代は明治。小説家を志す十七歳の冬子は敬愛する文学者の尾形柳後雄のもとで女中として働きつつ、小説家になる道を探りますが…柳後雄の理不尽な要求や夫となる九鬼春明との仮面夫婦生活など、男性社会に翻弄されながらも、自分の道を行こうとする姿勢は応援したくなります。2024/05/06
たこ
2
2024年4月13日第1刷発行。通底する冬子の書き手としての欲求。たたみかけるような真綿で首を絞めるような現実を超えての春明との最後の語らい。終盤、凄い練度で整えてくる。2025/01/02
じゃみじゃみ
1
割と面白かった2024/05/21