内容説明
東北地方の山間盆地に伝わる説話や体験談を筆記・編纂し、日本民俗学の出発点となった『遠野物語』。山姥など異世界の住人、河童・ザシキワラシといった妖怪や、犬・猿・馬などが登場し、臨死体験、神隠しなど不思議な話を収めたこの著作から、柳田は何を説こうとしたのか。伝承にひそむ古来の生活様式やものの見方を知り、日本人の歴史的変遷を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
102
三島由紀夫と同じく『遠野物語』は文学として読んできたが、各エピソードの背景にある伝承や信仰について知っていくと、日本は単一民族国家などと放言する愚かさを思い知らされる。人命は鴻毛より軽く、ザシキワラシや河童などの異形を隣人とし、狼や猿と交流してきた「山の民」の生活や考え方が、そう遠くない時期まで受け継がれていた。日本とは最初から多くの文化が並存していた四つの島を、政治的経済的な要請から強制的に同一化され生まれたのだ。そんな日本と日本人を考える際、柳田の本が異議申し立ての補助線とされてきた事情が見えてくる。2023/01/15
tamami
56
興味関心を惹くテーマの一つに民俗学がある。本書は、前半部分で民俗学の創始者である柳田國男の最初の著作である『遠野物語』について、登場する山人、山女といった異世界の住人や妖怪たち、また動物たちについて、関連する多くの論考を参照しながら考察している。後半は『遠野物語』の中に、日本人生成の歴史的経緯から見る、多文化主義ともいえる柳田の真意があったのではないかとする。「物語」に登場する物の怪?たちの解説はやや冗長の感があるが、後半の、「物語」は列島の先住民、少数民族への先駆的な注目であったとの考えは、印象に残る。2022/09/09
yamahiko
16
福井での講演の際、著者が何に苛立っていたのか本書を読み氷塊しました。民俗学は変遷を丹念に追跡する比較研究法によって立つ学問であるべきであり、エスノス論を振りかざしわかった気になっては、決して真実は見えないということだったのですね。2022/10/29
takao
3
ふむ2023/12/12