内容説明
アンモナイトといえば、まずあの「ぐるぐる巻いた殻」を思い浮かべるのではないでしょうか。アンモナイトは日本古生物学会のシンボルマークにもなっており、小学校理科の教科書では「白亜紀末に絶滅した頭足類」「地質時代を示す示準化石の一つ」と説明されます。化石を持っている人もいるかもしれません。それなのに私たちは、アンモナイトが実際にどのように生きていたのか――何を食べ、どんなふうに成長し、どのように泳ぎ、どういった進化を遂げたかなどをあまりよく知りません。なぜなら、本体である軟体部が化石になりにくく、また生活の痕跡が地層に残りづらいことなどにより、そもそも古生態の復元が難しいからです。
研究の進展により、その謎は徐々に明かされてきました。種ごとに食性や生息域が異なっていた可能性、雌雄で大きさが異なっていた可能性、より小さな卵をたくさん産んだ可能性……など、この10年ほどで次々と指摘されるようになってきました。本書では、「アンモナイト博士」として親しまれる著者が、アンモナイトのリアルな姿や生きざまを最新研究を交えてわかりやすく解説します。アンモナイトのことを知りたいなら、まずは手に取ってほしい一冊です。
目次
第一章 アンモナイトのきほん
第二章 アンモナイトの進化と絶滅
第三章 アンモナイトの成長
第四章 アンモナイトの生態
第五章 アンモナイトのタフォノミー
第六章 異常巻アンモナイト
第七章 アンモナイトの復元
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
更紗蝦
38
アンモナイトという生物の全体像だけでなく、アンモナイトの研究の“歴史的背景”も理解できる内容となっています。「3Dプリンターで作ったアンモナイトの精巧な模型に動力源をつけてロボットにし、実際に泳がせてみた実験」と、「アンモナイトが死んでから化石になるまでの過程を推測する試み」(研究分野としての名称は「タフォノミー」)と、「アンモナイトの復元画の歴史」が面白かったです。2024/03/21
左近
4
古生物に詳しくなくとも、誰でも名前は知っているアンモナイト。猫と暮らしたことのある人なら、きっと「ニャンモナ(ニャ)イト」と言ったことがあるはず?そんな身近な存在なのに、実態についてはあまり知られていない絶滅頭足類。見た目がオウムガイに似ている「普通の」アンモナイトだけでも、これだけ種類があるだけでなく「異常巻」がたくさんいて、しかもそれは「奇形」ではなく、きちんとした法則や合理性に基づいて進化(種分化)したものだったとは!そう言えば昔、アノマロカリスのロボットを作って実験した映像を見たことがあったなぁ…2024/07/26
tokkun1002
3
2024年2月。参考文献の数で白飯が食える。1930年のアンモナイト予想図が好き。2024/09/15
才谷
3
アンモナイトは最も知られている化石の一種だと思うけれど、意外とその生態は謎に包まれている。なにせ殻はたくさん残っているのに本体の化石は残らないからだ。そんなアンモナイトの長年の研究の成果をわかりやすく解説されていて入門編としてはとても面白い内容。一番の驚きは隕石の落下で恐竜と共に絶滅したと思っていたアンモナイトだけど、実はそこから数万年は生き続けていたらしい。2024/04/11
Kazuyuki Koishikawa
3
入門書と銘打つだけあって、幅広く知識の導入をしてくれてよかった。 異常巻きのアンモナイトとかも安定して泳げるとか意外だった。成長のアルゴリズム解析とかも面白い。 卵や排泄物に生身の体本体の化石とかあったり、筋肉痕とかも分かるのかとか色々感心した。2024/03/24