実存主義者のカフェにて - 自由と存在とアプリコットカクテルを

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実存主義者のカフェにて - 自由と存在とアプリコットカクテルを

  • ISBN:9784314012041

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内容説明

「本は人生をすっかり変えてしまう。この事実を、ほかのどんな現代哲学よりもはっきりと証明してみせたのが、1950年代から60年代にかけて世界じゅうに広まった実存主義だった」

1933年、パリ・モンパルナスのカフェで3人の若者、 ジャン=ポール・サルトル、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、レイモン・アロンが、 あんずのカクテルを前に、現象学について熱く語り合っていた。 ここから生まれた新しい思想「実存主義」は、 やがて世界中に広がり、第二次大戦後の学生運動、公民権運動へとつながっていく――

ハイデッガー、フッサール、ヤスパース、アーレント、メルロ=ポンティ、レヴィナス、カミュ、ジュネ……哲学と伝記を織り交ぜたストーリー・テリングで世界を魅了した傑作ノンフィクション。

27か国で刊行! ニューヨーク・タイムズ「今年の10冊」(2016年)

「哲学者」たちが、生を突きとおしたひとりの人間となって立ち上がってくる。かれらは、書き、喧嘩し、考え、酔っ払い、ダンスし、生きていた。
世界も自分も、どちらも手放さない思考はいかにして可能なのか。 
―――永井玲衣

<本書より>

実存主義を脇へ追いやった華やかな思想たちも、すでにそれ自体がひどく古び、衰退してしまった。21世紀の関心事は、もはや20世紀後半の関心事と同じではない。もしかしたら、現代のわたしたちは新しい哲学を探しているのかもしれない。
それならば、試しに実存主義者たちを再訪してみてはどうだろう。

わたしたちはいつのまにか、際限なく監視され、管理され、個人情報を握られ、あらゆる消費財を与えられ、それでいて本心を語ったり、秩序を乱したりすることはいやがられ、人種や性や宗教やイデオロギーによる衝突が終わりにならない現状をつねに思い知らされている。(略)だからこそ、自由を論じたサルトルの著作を読むとき、あるいは抑圧の巧妙な仕組みを論じたボーヴォワール、不安を論じたキェルケゴール、反抗を論じたカミュ、科学技術を論じたハイデッガー、認知科学を論じたメルロ=ポンティを読むとき、最新の話題を読んでいるように感じることがあるのだ。

人種や階級のせいで迫害されている人たちや、植民地主義と闘う人たちにとって、実存主義は文字どおり視点を変えてくれるものだった。というのも、サルトルはどんな状況であれ、もっとも虐げられている人やもっとも苦しんでいる人からどう見えるかで判断せよと主張したからだ。

抽象的なことをいくら考えても難題を解決することはできない。わたしたちは実人生に即して考えるべきであり、最後にはみずからの存在すべてを背負って選択しなければならない。

フランスでは、ガブリエル・マルセルがジャン=ポール・サルトルを攻撃し、サルトルはアルベール・カミュと仲たがいし、カミュはメルロ=ポンティと仲たがいし、メルロ=ポンティはサルトルと仲たがいした。そしてハンガリー出身の知識人アーサー・ケストラーは全員と仲たがいし、路上でカミュを殴った。

哲学は人生のなかに置かれてこそおもしろくなり、同様に、ひとりひとりの人生経験は、哲学的に見ることでさらにおもしろいものになるとわたしは思っている。

目次

第1章 ねえあなた、実存主義ってなんておぞましいのかしら!
第2章 事象そのものへ
第3章 メスキルヒの魔法使い
第4章 世人(ひと)、良心の呼び声
第5章 ニワザクラを噛み砕く
第6章 自分の原稿を食べるなんてまっぴらだ
第7章 占領と解放
第8章 荒廃
第9章 人生の研究
第10章 ダンスをする哲学者
第11章 かくも深き対立
第12章 もっとも恵まれない者の目で
第13章 あのすばらしき現象学
第14章 いわく言いがたい輝き

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おたま

45
最近になって実存主義がまた注目されてきているという。この本では、主として現象学、存在論、実存主義という第二次世界大戦前から戦後にかけて起こってきた哲学的潮流の主要な哲学者たちの、それぞれの主張とともに人間的な交流が描かれている。登場してくるのは、中心にはハイデッガーとサルトルが置かれているが、その関連で、フッサール、ヤスパース、アーレント、レヴィナス、ボーヴォワール、メルロ=ポンティ、カミュ等々、錚々たる人々であり、織りなされていく人間関係。その人間的な関係は、彼らの思想も含めて大変興味深い。2024/04/30

kazi

21
面白かったです。本作は、実存主義という思想運動を、非常に魅力的かつ親しみやすく語りなおしたノンフィクションであり、思想そのものよりも、それに関わった“人間たち”に焦点を当てた、まるで群像劇のような作品だと感じました。中心に位置するのはやはり、サルトルとハイデガー。その周囲にはボーヴォワール、メルロ=ポンティ、フッサール、カミュ……名前を挙げればきりがない、倫理や価値観が大きく揺らいだ時代に、現象学や実存主義に身を投じた哲学者たちが登場します。2025/06/20

hiroizm

20
タイトルに惹かれて読書。サルトル、ボーヴォワールを中心に、フッサール、ハイデッカー等現象学、実存主義哲学者たちの人物像と思想と関係性を、当時の社会状況を交えて描いた20世紀知識人評伝ノンフィクション。一見バラバラに見えた思想家たちが実は互いに影響しあっていること、また第二次世界大戦という荒波の最中、彼らがどう暮らしていたかも俯瞰できて、読んでいくうちにズブズブハマってしまった。読後は、高校生時にこの本読めたら挫折することなく「嘔吐」が読めたかも、と当時サルトル談義した同級生たちを思い出しつつしみじみ。2025/06/05

manabukimoto

6
二十世紀、考えることを専門にする人たちが、世界を、人間を、どのように考えてきたのか? フッサール、サルトル、ハイデッガー、メルロ=ポンティ、カミュ…。世界大戦を挟んで、混沌の世界を生きる哲学者たちの、思考の共鳴と反射と衝突と革新。 ネットなき時代、知を求めて人が集うのが興味深い。フッサールがいたフライブルグ。人口十万人、大学や大聖堂があり、知識人の街、現象学の都。大学都市という概念を初めて知る。 SNSで馬鹿でも「多様な」言説が垂れ流される現代と比較すると、哲学という道標がある時代のなんと豊かなこと!2024/11/09

TM

5
実存主義哲学を、「伝記」あるいは「歴史」の中に位置付けることによって、生き生きと描き出してくれる名著。思想としての実存主義が、単に哲学としてではなく、「生き方」としてまさに実践されていたこと、それが多くの人に影響を与えて、歴史を動かしたといえること、そして、それを語ったサルトル本人も一人の人間であったこと、が歴史上の物語と共に語られている。イメージを持ちにくい「哲学」というものに、鮮やかな色が与えられていくような感覚を得られる。無味乾燥な「思想」ではなく、血の通った「生き方」を垣間見ることができる。2025/08/14

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