内容説明
寄席に行かずに落語を知る画期的な方法として明治期に生まれた「口演速記」。三遊亭圓朝ら当時の人気落語家の速記本は好評を博し多くの読者を獲得しました。一方、二葉亭四迷らの言文一致運動にも多大な影響を与え、日本近代文学史上においても重要な役割を果たしています。演芸速記の誕生秘話や発展の歴史、そして坪内逍遥、夏目漱石ら作家たちとの関わりなどを解説しながら、明治期の落語を現在に残す第一級の資料である口述速記について考察。文学ファンのみならず、ディープな落語ファンの要求にも応えます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
124
明治における言文一致体の成立こそ、近代文学史上最大の事件だろう。文学史では坪内逍遥と二葉亭四迷に功績を帰しているが、実際は新しく導入された速記術で落語を読めるようになったのが大きな理由だったとは。速記による落語の記録が本や雑誌として出版されると、庶民は急速に口語体の文章に慣れていった。演芸に親しんでいた江戸っ子の夏目漱石にとって、自分が小説を書くには言文一致のほうがやりやすかった。従来ほとんど知られてこなかったのは、研究者にとって最も重要な文体が速記や落語の影響下で改造された事実を認めたくなかったのかも。2024/06/16
ネギっ子gen
44
【堅苦しく遠回しで読みにくい文語体から、より簡易でリアルでダイレクトな文章表現。『怪談牡丹灯籠』の速記が、明治の「言文一致体」誕生のきっかけとなった】噺家(三遊亭楽松)の女房が、演芸速記本の誕生秘話や発展の歴史、逍遙や漱石らとの関わりなどを解説した書。巻末に参考文献。<明治期の演芸速記には、その時代の空気感がリアルにしみこんでいて、現代の高座や小説との違いにしばしば驚く。今では絶対に書けない言葉や演出が文字となって残っているため、その時その場所のリアルな音として、ダイレクトにぶつかってくるのだ>と。⇒2024/05/24
道楽モン
33
岩波文庫で三遊亭円朝の速記本は容易に入手可能で、私もそれで読みました(青空文庫にも多数あり)。今、読んでも古臭さは無く、むしろ脳内再生による生き生きとしたライヴ感と、話し言葉によるリズム感は不滅です。これを支えたのが明治の花形職である速記技術者。東京の寄席でしか出会えなかった落語や講談を、新聞連載を通じて一気に全国区にまで押し上げた功績は歴史的快挙。夏目漱石や二葉亭四迷が落語口演速記の影響を受けている事は有名だけれど、文学だけでなく経済的な成功による影響も大きい(講談社など数多くの出版社が生まれた)。2024/10/19
rokoroko
20
友人の国会速記者が昔(今はないのか)間違えた言い回しを訂正するかしないかという事を話してた「喧々諤々を喧々囂々とか」どっちでもいいじゃんなどと思ってたけど速記というのはその時の話を映してたんだね。ふむふむ。2024/06/02
べあべあ
11
私が好きな落語の師匠が、けっこう速記から圓朝ものなどを掘り起こされた方なので、タイトルに魅かれて読みました。たしかに、文語から口語への移行期に、速記ものが文学に与えた影響も忘れてはならない、と納得しました。2024/06/05
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