内容説明
パンデミックは落ち着いたものの、コロナへの対応を常に心に留めておかないといけないという意味で、我々の社会は「コロナ化」しているといえる。本書は2019年末から2023年夏までの期間を対象に、感染拡大初期に限定した内容の『命か経済か』に引き続き、世界各国および日本国内の政治的な動向についての総括を試みる。
目次
はしがき
第1章 COVID-19と社会の変容─何が変わり、何が変わらなかったのか[岩崎正洋]
1.命か経済かという問題
2.国家と個人の関係
3.政策課題の対立
4.ゼロ・コロナかウイズ・コロナか
第2章 自由の制限はいつどのように許容されうるか─チルドレス諸原則の分析[松元雅和]
1.感染症問題と自由の制限
2.制限の制限
3.〈諸原則〉の構造化
4.制限の最終性
5.感染症対策への示唆
6.変化と持続
第3章 時間のなかのコロナ危機政治─9月入学制導入失敗の政策過程と歴史的文脈[西岡 晋]
1.危機は改革のチャンス?
2.危機と政治
3.9月入学制導入の課題設定過程
4.9月入学制導入の挫折
5.ロックインされた4月入学制
6.なぜ政策は変化しなかったのか
第4章 コロナ禍前後における都道府県間の人口移動[羽田 翔]
1.コロナ禍におけるワーク・ライフバランスの変化
2.日本における都道府県間の人口移動
3.人口移動の中心性とは
4.コロナ禍における人口移動の中心性の変化
第5章 グローバルヘルス・ガバナンスの制度改革─変わり始めた科学と国境[小松志朗]
1.岐路に立つグローバルヘルス・ガバナンス
2.国境をめぐる政治と科学
3.データの不足と科学の不確実性
4.国境の変容
5.2つの懸念材料
第6章 ブラジルをめぐる域外大国のワクチン外交と国内の反応[舛方周一郎]
1.「ワクチン外交の戦場」で展開されるパワーゲーム?
2.域外大国のワクチン外交とその研究課題
3.域外大国のワクチンを迎え入れるブラジル
4.域外大国のワクチン外交に対する政府の反応
5.域外大国のワクチン外交に対する市民の反応
6.域外大国のワクチン外交は受容国に何をもたらしたのか
第7章 COVID-19の流行はトルコ政治を変えたのか─野党間連携と分断の深化[岩坂将充]
1.「不変」のトルコ政治?
2.トルコにおけるCOVID-19の流行
3.野党間連携の加速
4.2023年大統領選挙・議会選挙
5.さらなる分断の固定化と深化
第8章 COVID-19パンデミックとスウェーデン政治[鈴木悠史]
1.スウェーデンの「緩い」コロナ対策
2.スウェーデンの行政システムの特徴
3.スウェーデンの感染症対策
4.COVID-19パンデミックの発生とスウェーデンの対応
5.専門知を重視したスウェーデンのコロナ対策
第9章 スウェーデンのCOVID-19対策の「独自路線」の構造について─集団免疫、行政の独立性、さらに西側軍事協力とNATO加盟申請[清水 謙]
1.スウェーデンの独自路線
2.スウェーデンにおけるコロナ対策の推移と「集団免疫戦略」?
3.なぜ公衆衛生庁とテグネル国家疫学官は独自の政策を採れたのか?
4.「成功」か「失敗」か、それとも?
5.何が変わって何が変わらなかったのか?
第10章 アメリカ小規模自治体における議会過程─COVID-19の影響とそこからの復帰[辻 陽]
1.本章の分析対象とその地方制度
2.議事運営
3.議題
4.COVIDをめぐる議論の展開
5.COVID対応から未来志向の議会へ
第11章 COVID-19が日本企業に与えた影響─日本企業の課題と展望[鈴木貴大]
1.日本におけるCOVID-19の影響
2.ICTの浸透とDX戦略
ほか