内容説明
1972年。二十歳の数学者アリシアは、自ら望んで精神科病棟へ入院した。医師に問われるままに彼女は語りはじめる――数学と死に魅せられた自身の人生、原爆の開発チームにいた父、早世した母、そして最愛の兄ボビー。静かな対話から、孤高の魂の痛みが浮かび上がる。『通り過ぎゆく者』の裏面を描く異色の対話篇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
60
二人だけの劇にしても違和感がない程、シンプル。同時に難解である。それはアリシアの「理解されなくてもいい」というスタンスがあるからなのか。人間にとって、深く、知を求める事は苦悩の始まりでもある。だからこそ、関心を狭めて自己を守る。聡明であるが故に世界の異常性や人間の関心に対する限界に気づき、人間社会との溝を諦観していた彼女は望んで精神病院の扉を叩く。他者の数学や哲学の理論を使い、医師の分析を煙に巻く彼女。だが、最愛は兄ただ一人と吐露した事から「捉えどころのない他者」から「一人の女性」として認識が変わる。2024/07/20
ヘラジカ
44
『通り過ぎゆく者』を補完する“兄妹”作品。あちらの感想では「集大成」と書いたが、正確に言うならばこの二作はマッカーシー文学の源流もとい淵源であり、文字通りの世界観を純粋な形で小説にしたものではないか。『通り過ぎゆく者』がフィジカルならば、この『ステラ・マリス』はスピリチュアルを担う作品として読んだ。衒学的な対話は難解だが作品自体はとても読みやすい。尋常ならざる視覚と視野、物理学と哲学が交錯するところに生まれた独特の死生観。文学において唯一無二の超越的存在であることを再確認できる圧巻の巨編であった。2024/03/20
田中
25
「ステラ・マリス」という言葉そのものが現すようにアリシアは美しい。ラテン語で「海の星」という意。カウンセラーとの対話が永遠と続く。浮き世離れした数学理論や学者たちの功績評価をアリシアは滔々と述べるも誰も理解できないのだ。でも、兄にたいするプライベートな強く異常な愛情は本気だった。ある面では禁忌の愛を抱えたために、生きる耐久性を失ったのだろう。天才的な聡明さと寂寥感が混在している彼女の狭い世界は、異様で閉塞的なのだ。対話をとおして彼女の孤独さと純粋すぎる心がみえてくるようだ。 2024/07/04
kazi
24
読み終わったのだが、私、全然この作品に入り込めてないです。数学的・哲学的衒学に眩まされて、煙に巻かれただけ感。読み終わってもなにも伝わってこないのだが、セットで刊行された「通り過ぎゆくもの」を読めば180度反対の感想を得られるのかしら?今のところイマイチとだけ。2024/09/16
特盛
21
評価3.5/5。難解ホークスだ。通り過ぎゆく者、と対になる作品。前作主人公ボビーの妹(数学から離れた若き天才数学者)の視点。物語は精神病院、ステラ・マリスで彼女が医者と対話する形で進む。数学、物理、学会の人間模様、実在、死、無意識、家族や兄弟の関係、妄想等に関する応答が淡々と続く。ぶっ飛んだ知性による哲学的思弁に関する応答は、何か深い水の底で聞いているようだ。不思議な、何か超越的な魅力の世界観だ。何だか無性に数学や物理の勉強がしたくなり、20年以上ぶりに初歩的な教科書を注文した。2024/05/17
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