内容説明
〈一人前〉としてふるまう.すなわち,話し合いを通して他者と対等にわたりあい,自らの価値と地位を向上させた人びとが,戦後社会を築いてきた.向上にこだわる社会は,ありのままの人を認めないまま,生きづらい現在にいたる.働く場と暮らしの場の声を拾い上げながら,歴史の流れをつかみ,隘路を切りひらく方途を探る.
目次
序 章 「一人前」が容易ではなくなった社会で
一 生きづらい社会
二 「一人前」を問う
第一章 目覚めと挫折――戦前の営み
一 人格承認要求と大正・昭和
二 上層労働者だけが「一人前」
三 権利なきなかでの要求
四 「お国のため」の社会――小括
第二章 飛躍と上昇――敗戦~一九七〇年代
一 人並みに生きたい――戦後改革と「一人前」
二 「同じ労働者」として
三 「市民」として,「人間」として
四 人並みを話し合いで勝ち取った社会――小括
第三章 陶酔と錯覚――一九七〇年代~一九九〇年代
一 「日本的」なるものと新たな「価値」の噴出
二 企業での「自己実現」
三 「連帯」から「女縁」へ
四 企業に傾倒した社会――小括
第四章 多様化と孤立――一九九〇年代~現在
一 迷走する政府――パッチワーク的な政策
二 非正規労働者は「半人前」?
三 「自分らしさ」とは?
四 中間団体をなくし「自己責任」が独り歩きする社会――小括
終 章 新たな「一人前」を求めて
あとがき
参考文献