内容説明
パルチザンとして闘争に身を捧げた父の突然の死。喪主として帰郷した娘だが、その葬儀には思いもよらない弔問客たちが次々と訪れる。人生の複雑さをユーモラスにたたえた、傑作長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
47
亡くなってから初めて出会う家族の一面。世に溢れるありふれた話だが、この自伝的小説で語られる父親は共産主義の革命家だったのである。血を分けた娘であるが故に存在する分厚いフィルターに覆われた一人の人間の姿が、軽やかに語られる友人や親戚の記憶によって鮮明になっていく。初めて知る、弱くもあり強くもある男の一生。当然のごとく綺麗に印象が変わるわけではなく、娘としてアンビバレントな感情が前面に出る瞬間もある。それでも、父親ではない姿を知ることで逆に親子の結びつきが強まる様にはとても心が動かされた。素晴らしい作品。2024/02/27
azukinako
46
父の突然の死によって喪主を務めることになった娘が3日間の葬式で弔問客を通して自分の知らない父の姿を知っていく。パルチザンだった父親とパルチザンの娘として生まれたアリにとっては父との和解のプロセスで、読者としての私が韓国の現代史をなぞっていく過程にもなった。父も娘も壮絶な人生であったと思うがユーモアも交えて語られ、政治的には右であったり左であったりするだろうがお葬式で同席する面白さ(田舎あるある)、「よほど」の事情があるんだろうと人助けをする父が最後に助けたであろうベトナムからお嫁にきた母娘の話に涙した。2026/01/25
oldman獺祭魚翁
30
父親は元パルチザンで、バリバリの社会主義者。しかし酒飲みで畑仕事は苦手。自分の田んぼより他所の家庭とダメダメのオッサン扱いだが、その葬儀に集まる人々は……少しづつ明らかになる亡き父の姿……韓国の葬儀は三日間だがどの時間でも構わないとの事。変にその世界に引き込まれ、心がホンノリしてくる。不思議な本だが読んでいて楽しいというか……あの国の人間がどうして政治に関心が強いのかが解って来る。やはり闘って得た自由は違う。2026/02/28
星落秋風五丈原
26
『北斗の拳』パロディをやるつもりはないが、作品が始まった時には、タイトルの父は既に死んでいる。なんと電信柱に頭をぶつけて亡くなったのだ。パルチザンとして闘争に身を捧げた父の最後としては、あまりにあっけなかった。82歳という高齢であり、認知症も患っていたらしい。若い頃には血気盛んなパルチザンとして名を馳せた男も、結句はただの老人として死んだ。著者の両親がモデル。かなりシリアスなバージョンを先に刊行した所、発禁処分を受け指名手配されてしまった。満を持して書かれた作品はシリアスみを減らしている。2024/03/22
tom
24
「生真面目に生きてきた父が電信柱に頭をぶつけ、人生に幕を下ろした」、ここから始まる物語。父は80歳と少しくらいか。その父の葬儀の場での娘の回想と周囲の人の思い出話で物語は進む。父は元パルチザン、偽装降伏、5年間服役して郷里に戻る。その後は、ひっそりと暮らすけれど、娘との関係はそれまでの状態には戻らず、微妙な関係が続いた。そして、葬儀の3日間、娘が見ようとしなかった父の姿が現れる。父の口癖は「よほどの事情があるのだろう」、そして真摯に人と関わる。背景に現れる政治的経済的確執の中の家族姿が凛々しい。良い物語。2024/07/10




