父の革命日誌

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父の革命日誌

  • ISBN:9784309208985

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内容説明

パルチザンとして闘争に身を捧げた父の突然の死。喪主として帰郷した娘だが、その葬儀には思いもよらない弔問客たちが次々と訪れる。人生の複雑さをユーモラスにたたえた、傑作長篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヘラジカ

46
亡くなってから初めて出会う家族の一面。世に溢れるありふれた話だが、この自伝的小説で語られる父親は共産主義の革命家だったのである。血を分けた娘であるが故に存在する分厚いフィルターに覆われた一人の人間の姿が、軽やかに語られる友人や親戚の記憶によって鮮明になっていく。初めて知る、弱くもあり強くもある男の一生。当然のごとく綺麗に印象が変わるわけではなく、娘としてアンビバレントな感情が前面に出る瞬間もある。それでも、父親ではない姿を知ることで逆に親子の結びつきが強まる様にはとても心が動かされた。素晴らしい作品。2024/02/27

星落秋風五丈原

26
『北斗の拳』パロディをやるつもりはないが、作品が始まった時には、タイトルの父は既に死んでいる。なんと電信柱に頭をぶつけて亡くなったのだ。パルチザンとして闘争に身を捧げた父の最後としては、あまりにあっけなかった。82歳という高齢であり、認知症も患っていたらしい。若い頃には血気盛んなパルチザンとして名を馳せた男も、結句はただの老人として死んだ。著者の両親がモデル。かなりシリアスなバージョンを先に刊行した所、発禁処分を受け指名手配されてしまった。満を持して書かれた作品はシリアスみを減らしている。2024/03/22

tom

23
「生真面目に生きてきた父が電信柱に頭をぶつけ、人生に幕を下ろした」、ここから始まる物語。父は80歳と少しくらいか。その父の葬儀の場での娘の回想と周囲の人の思い出話で物語は進む。父は元パルチザン、偽装降伏、5年間服役して郷里に戻る。その後は、ひっそりと暮らすけれど、娘との関係はそれまでの状態には戻らず、微妙な関係が続いた。そして、葬儀の3日間、娘が見ようとしなかった父の姿が現れる。父の口癖は「よほどの事情があるのだろう」、そして真摯に人と関わる。背景に現れる政治的経済的確執の中の家族姿が凛々しい。良い物語。2024/07/10

二戸・カルピンチョ

21
パルチザンの父が亡くなった。喪主を務める一人娘のアリは、沢山の弔問客から自分の知らなかった父の在りし日の出来事を知ることになる。歴史上の悲劇は何が悲劇かと言えば、民衆が長く苦汁を舐めることを指すのだろう。思想が先か、悲劇が先か。思想より宗教が上か。右か左か。それを超越した、元パルチザンの父と娘とその周囲の、深く、温かい物語だ。世界は複雑過ぎる。2024/10/02

石橋陽子

18
社会主義者である父が電信柱に頭をぶつけて死んだ。という冒頭から、センスのある言葉選びや比喩がとても上手くすぐに引き込まれた。死んだ父からの生前の言い伝えが、娘の思考の主軸となっている。次々と現れる弔問客から過去の父のことが語られていく。娘よりも弔問客の方が父の事を知っていたり、娘にとって思うことは沢山あった。だが、父に今更問うことは出来ない。当時親日派の人は殴り殺される対象になったり、朝鮮の歴史が随時入ってきており、人生の複雑さを克明に表されていた。2024/09/23

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