内容説明
芥川賞受賞作家・藤沢周が『Web新小説』に初連載した書下し短編小説、待望の書籍化。
短編小説、 待望の書籍化。「ブエノスアイレス午前零時」119回芥川賞受賞の藤沢周が贈る自分の過去(記憶)をたどりながら現在と交錯する私小 説風書下し作品集。著者の故郷である新潟を舞台に、主人公の幼い頃の「過去」と感染症がはびこる「現在」が交錯する。 人間にとって記憶の本質を問いかける作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
CEJZ_
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1P17行。2024年刊。連作短編集。webで連載されていたことは知っていたが、春陽堂書店から単行本が出ることに「おぉ!!」と注目。新潟市西区の内野(うちの)町と新川(しんかわ)という川、とてもよく知っている。現在の存在と過去の存在、記憶の片隅から甦る仄暗い思い出。わたしは著者と年齢が近いわけではないが、昔の漁師町、内野や新川ならさもありなんと、想像で当時の風景をアタマに思い浮かべていた。藤沢周の連作短編集はどれも味わい深く、今作も一気に読んでしまい、またまた興奮醒めやらぬ状態となった。2024/02/28
平坂裕子
1
誰もが心の奥に残っているそれぞれの記憶は、時に優しく時に残酷な想いを抱かせる。記憶に残る風景がとても鮮明に、切ないほど懐かしく、自分の中の記憶も思い出しながら、なんだかうっとりと読み終えた。2024/04/10
Nick Carraway
0
63歳の老人(「初老」と何度も書いてあるが、どうも違和感がある)が鎌倉に住みながら、故郷の新潟市内野に実際に出向いたり、また記憶の中の内野の風景に記憶を飛ばしたりして紡ぐ幻想的な短編群。新川や内野の神社、五十嵐浜などの風景が私にも生々しい。新潟弁も。とりわけ、新川を流れていくものへの追想を描く「抱き水」、嫌いな教師への反抗とその教師の死を描く「鷺」などの作品が味わい深かった。文章の香気に、藤沢周の熟練の手腕を感じ、十分に味わうことができた。2024/03/27