クリスティーヌ

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クリスティーヌ

  • ISBN:9784908184499

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内容説明

【フランス2021年 メディシス賞受賞、ゴングール賞ノミネート作品】

実父による近親姦に苦しみ続けた少女は、どのように1人の女性として自己確立していったのか、その人生を描いた物語。

本書は、フランスの作家、劇作家で脚本家でもあるクリスティーヌ・アンゴの二十四作目の小説『Le Voyage dans lEst』2021年刊の全訳である。

物語は十三歳になったクリスティーヌが初めて実の父親に会う日から始まる。憧れの父親にようやく娘として認知され、これからは普通の親子としての生活が始まると有頂天になるが、現実は想像とは全く別のものだった。自分の身に何が起きているのかを伝え、救い出してほしい気持ちとは裏腹に、母親にすら話すことができない。そして誰にも打ち明けられないまま、少女時代は過ぎていった……。
著者が綴るのは、クリスティーヌが苦しみ、トラウマを抱えて人生に絶望しながらも、どのように一人の女性として自己確立をしていったのか、その命がけの人生そのものである。

著者のアンゴも実父による近親姦からのサバイバーであり、デビュー作から一貫して女性に対する性的虐待をテーマに書き続けてきた。ただ、作中の「クリスティーヌ・アンゴ」は作者自身ではなく、本書はアンゴの自伝ではない。しかし、彼女の作風はあまりにも実体験と近接しており、作者と語り手を分離しにくいかもしれない。一つだけ強調しておきたいのは、アンゴにとって「近親姦の被害者」という「立場」と「実体験」は文学作品を生み出すための出発点に過ぎないということだ。
サバイバーのアンゴは「文学作品を書くこと」という手段で戦う。戦う相手は家族関係を破壊し、隷属の関係を強要する性的虐待者だけではない。それを見ないふりをし、セカンドレイプをする「社会」全体である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヘラジカ

39
「実父からの性的虐待によって破壊された女性の人生」という一元的な見方、読み方を許さない。憐憫や嫌悪感、あるいは同情心など、分かり易い感情を中心に読むことが到底不可能な難しい小説である。解説でも使われていた”実存的な不安”という言葉通り、どこからどこまでが歪められた性格なのか、父親に滅茶苦茶にされなければあり得た自分とは何かが、一種模索するような語りによって綴られている。確かに神話的な自己供儀の物語という視点も提示されており、シンプルな自伝的小説に見えてとても複雑な作品であった。2024/02/05

星落秋風五丈原

24
何度も何度もこのテーマで書いている作者。妊娠した途端母親を捨てたくせに13年ぶりに出会った娘が美しくなっていて関係を少しずつ深めていく。2024/07/29

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