内容説明
『夫婦善哉』の作者であり、太宰治、坂口安吾の盟友としても知られる織田作之助。その作品の魅力は豊かな物語性にある。料理人順平の流浪の旅を描く「放浪」。別府へと逃れ落ちた男と女――「雪の夜」。商才に優れた男が家を再興する芥川賞候補作「俗臭」。龍馬に慕われた寺田屋お登勢の半生「蛍」。織田文学の研究者が厳選した11編を収録。波瀾万丈そして人情。大阪が生んだ唯一無二の作家がここにいる。(解説・斎藤理生)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
里愛乍
52
何処となく泥臭く、スタイリッシュとははるかに程遠く、人間の狡さも醜さも愚かさも描き込まれたうえで温かい。壮大な笑いもあり、そのくせじんわりと沁みる、そんな織田作之助の小説が好きである。本書は既読作もいくつかあるが、収録された一作一作の注解が素晴らしい。編者である斎藤教授の解説だけでも自分にとって購入する価値は充分すぎた。無頼派について特に触れられ、太宰や安吾との作風の違いについて記されているところが興味深い。2025/01/10
優希
47
波瀾万丈で人情味あふれる面白さがありました。誰もが個性的で豊かさがあります。大阪を舞台に多彩で唯一無二の作品を作り出すのが織田作なんですね。2024/04/05
メタボン
29
☆☆☆☆★ 大阪の世相を活写した短篇や、恐らくオダサクが得意とする一代記を題材とした作品が収録。兄の文平は使い込みを苦にして猫いらず飲んで自殺、弟の順平は婿養子になり切れず半端な料理人として「放浪」。先代の放蕩で傾いた魚問屋を出て成金になるまでを描く「俗臭」。笑ってしまうほど情けない夫を女の一人語りで描く「天衣無縫」。いつの間にか夫婦仲睦まじくなっている「人情噺」。しっかり者の登勢「蛍」。千日前の逞しい市民の様子「神経」(既読)。癌で妻を亡くした「高野線」。電報を受けてホームで待ち続ける女「郷愁」。2024/06/22
ori
15
オダサク初読み。めっちゃ面白いな(今さら中の今さら) 。俯瞰で冷静に人を観察しながら1人の人間の様々な面を描く。世間的にはどうしようもない人物に対してアホやなあ、でもしゃあないなあという情も見える。人間を描いてやるという気概まで感じつつ、しれっと外したオチでしれっと笑わせてくれる。凄いなー。締切に間に合わすために不本意に世相について書いた後、なぜ人を見つめない?世相とは結局人だろと後悔しまくる作家はご本人だろうか?もっと読みます!2025/01/25
きょん
12
恥ずかしながら初オダサクです。なんで今まで読まなかったんだろう。大阪含めた関西の空気、戦中戦後の困難な時代を描きつつも、そこにはタフに、またはそれなりに日々を淡々と生きるおもろい人間たちがいる。ペーソス溢れる短編集。なんかブルース(しかも関西の)が似合う一冊。2024/06/26