内容説明
人類史は歩行の歴史であり、カントや荷風ら古今東西の思想家・文学者も散歩を愛した。毎日が退屈なら、自由を謳歌したいなら、インスピレーションを得たいなら、ほっつき歩こう。新橋の角打ちから屋久島の超自然、ヴェネチアの魚市場まで歩き綴る徘徊エッセイ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いちろく
36
散歩が好きです。20代の頃は散歩の魅力があまり解らなかったけれど、30代になった辺りから少しずつ好きになり今に至る。散歩の哲学??? と思い手にした一冊ですが、飲食店や呑み屋での報告レポートも多くて思っていた内容とは正直違った。それでも、エッセイ的な内容も好きなので他の人の散歩報告を伺う感覚でも楽しんだ。プロローグ記載の抜粋になるが、「ウォーキングと一線を画す」という内容に一番同意した。散歩は目的に縛られなくても良いのだ。2024/04/13
Nao Funasoko
28
元来、歩くことには苦は無い。普段から近所のフィールドを歩くこと、近隣の低山を歩くこと、酒場を求めて知らない街を歩くこと、目的は何にせよぶらぶら歩きは好き。故に本書に書かれていることには共感もあるし、「なるほど、そういうことだったのか」と気づくこともあり。 哲学というには大げさな気もする(笑)が行為について意味づけ理屈づけしてみる(読む)のもまた楽し。2024/04/03
特盛
23
評価3.3/5。哲学というか、散歩に関するエッセイ。江戸時代は人は一日40km歩くこともあった。散歩をすると本を読むように細部から様々なメッセージを読み取れる。また歩行中考える由なきことの数々に、散歩無意識へアクセスできる運動であるとも言う。私は東京に住んでいるが、近代文学の8割は東京が舞台であるらしい。身体性から離れがちな都会に生きる人間としては、歩くことは生きることの実感を取り戻すささやかなきっかけになるかもしれない。なんて思ったら直近読んだマッカーシーの「ロード」も思い出した。2025/01/31
Inzaghico (Etsuko Oshita)
13
実践的なアドバイスがあった。初めての町では、飲み屋街を二往復して店を偵察するとか、地元の客のあとをついて行くとか。その客に「おすすめの店を教えてください」と頼んだというのだから恐れ入る。青森では「地元のやさぐれた感じの爺さん」に行きつけを聞いたが、何を言っているかわからなかった、という落ちまでついている。高円寺の路上飲み会に参加した際、20代の中国人や台湾人が「私たちは一生懸命働きたくないと思っているんですけど、東京に来ると四〇代でもそういう人がいて本当に励まされます」と言った、というところで噴き出した。2024/03/29
imagine
11
最近、地酒の魅力にハマってしまった。仕事帰りに老舗の酒場に寄り、休みの日には近所の酒屋さんを巡っている。そんな中で知った、島田雅彦センセイによる散歩の本。これはもう、ほとんど飲み歩きガイドだろうと思ったがその通り。中でも東十条の店主とのやり取りが白眉。タイトル通りの内容を求める方には、レベッカ・ソルニット「ウォークス」を薦めたい。歩くことは所有に対する抵抗である、と喝破する、痛快かつ知的な一冊。2024/06/30