新潮文庫<br> けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)

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新潮文庫
けものたちは故郷をめざす(新潮文庫)

  • 著者名:安部公房【著】
  • 価格 ¥737(本体¥670)
  • 新潮社(2024/03発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 180pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101121031

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内容説明

ソ連軍が侵攻し、国府・八路軍が跳梁する敗戦前夜の満州。敵か味方か、国籍さえも判然とせぬ男とともに、久木久三は南をめざす。氷雪に閉ざされた満州からの逃走は困難を極めた。日本という故郷から根を断ち切られ、抗いがたい政治の渦に巻き込まれた人間にとっての、“自由”とは何なのか? 牧歌的神話は地に堕ち、峻厳たる現実が裸形の姿を顕現する。人間の生の尊厳を描ききった傑作長編。(解説・磯田光一)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Willie the Wildcat

71
国家・他者の保証、自己証明など、物質的なアイデンティティーの喪失。唯一の心の拠り所は「故郷」。内戦や野生動物などの外的、そして飢え・渇き・病などの内的圧力の中、”獣”となり荒野を彷徨い、生き抜く。いや、獣になりきれないが故の感情が痛みであり救い。瀋陽で全てを失い高を頭に浮かべた時の悲しみ、そして”気持ちの良さ”が印象的。”監禁”状態・・・、荒野が続くも、1人1人の本能が求める安住地。久三の冷静さに、心理的解放と共に人の心底に潜む残酷さを感じざるを得ない。2017/06/12

こばまり

70
故米原万里氏の言葉を借りれば「打ちのめされるようなすごい本」。嗚呼、未だに私は文学という名の大海の波打ち際で遊ぶ童に過ぎない。2019/01/21

アキ

62
安部公房が満州から引き揚げた自らの体験を元にした小説。ある日突然ソ連の満州への戦争がはじまり、何度も死ぬ間際まで至りながら満州からの引き揚げ者の体験は強烈にその後の人生に影響を与えたであろう。この小説では久木久三はやっと辿り着いた船底で壁を隔ててそこにある日本に上陸が叶わない状況で終わりを迎える。日本に辿り着けずに現地に残った、または飢えや寒さで亡くなった人がどれだけいたのか。戦争下で証明書一枚だけでは国籍が認められない。誰が嘘つきで誰が信頼できるか解らない状況では、国家の存在自体も幻想になってしまうのか2019/11/30

Gotoran

60
敗戦前夜の満州、ソ連軍が侵攻し国府・八路軍が跳梁するという状況下。母の看病で逃げ遅れ、取り残された主人公の少年久三は、(満州で生まれ育ち)まだ見ぬ祖国日本を目指して壮絶な長い道程を逃亡していく。その過程で主人公と道連れの男は、もがき苦しみ、けものと化していく様が胸に突き刺さってくる。絶望と息詰まるほどの閉塞感を漂わせて物語は幕を閉じる。明るさ、楽しさ、更には希望さえもない。このような安部初期作品を終戦の本日、読了した。2021/08/15

James Hayashi

40
加藤陽子氏の「それでも日本人は戦争を選んだ」に掲載され、傑作ということで手に取った。幼少期を満州で過ごした著者であり、その体験も踏まえ当作を書かれていると思われる。終戦を迎えるがソ連は満州を侵略しつつある。敵はソ連兵だけではない。寒気、飢餓、八路軍や狼。まさしくサバイバル。満州は安住の地でなくケモノの住む荒廃地。母を失い、無政府状態の満州を見捨て久三は、祖国ふるさとを目指す。この作品の真骨頂はエピローグでなかろうか?日本行きの船の中の様子は「砂の女」とは異なるが似たテイストを味わえる。2017/11/06

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