岩波新書<br> 財政と民主主義 - 人間が信頼し合える社会へ

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岩波新書
財政と民主主義 - 人間が信頼し合える社会へ

  • 著者名:神野直彦
  • 価格 ¥1,100(本体¥1,000)
  • 岩波書店(2024/02発売)
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  • ISBN:9784004320074

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内容説明

新自由主義の浸透によって格差や貧困,環境破壊が拡大し,人間の生きる場が崩されている.あらゆる決定を市場と為政者に委ねてよいのか.いまこそ人びとの共同意思決定のもと財政を有効に機能させ,危機を克服しなければならない.日本の経済と民主主義のありようを根源から問い直し,人間らしく生きられる社会を構想する.

目次

序章 経済危機と民主主義の危機
民主主義による貨幣現象としての財政/社会システムにおける生命活動/財政の三つの役割/財政によるシステム統合/市場経済に抱かれる国家/民主主義に希望を託して
第1章 「根源的危機の時代」を迎えて
人類の存続が脅かされる危機/「生」は偶然だが、「死」は必然である/内在的危機と外在的危機/二つの環境破壊/所有欲求か存在欲求か/誤ったハンドル操作による自然環境の破壊/新自由主義の「政府縮小─市場拡大」戦略の登場/新自由主義による社会環境の破壊/共同体の崩壊と原理主義の台頭/地域社会の変容
第2章 機能不全に陥る日本の財政
──コロナ・パンデミックが浮き彫りにした問題
転換期に繰り返されてきたパンデミック/コロナ・パンデミックへの財政動員/日本型コロナ・パンデミック対応の問題/医療費抑制圧力の悲劇/なぜ「医療崩壊」を招いたのか/費用保障としての医療保険/公的医療機関の少ない日本/浮き彫りになった日本財政の無責任性/人間の生存に必要な対人サービス/労働市場と家族の変容/対人社会サービスへアクセスする権利保障/エッセンシャル・ワーカーの劣悪な労働条件/「規制・統制」受容の代償/生活面よりも生産面を優先した日本の対応/問われる財政の使命/財政縮小路線の大転換/財政機能の衰退/いまこそ財政の使命を拡大する戦略へ
第3章 人間主体の経済システムへ
──民主主義を支える財政の意義
「生」への省察の覚醒/未来の選択を民主主義に委ねる/民主主義を有効に機能させる/社会システムを活性化する/民主主義を下から機能させる/財政を機能させる/「参加社会」か、「観客社会」か/「参加社会」を成り立たせるもの/「観客社会」における民主主義への不信と絶望/熟議にもとづくスウェーデンのコロナ対応/「強い社会」というヴィジョンの構想/熟議と連帯というプロセス/人間不在の「新しい資本主義」のヴィジョン/人間を「手段」とするか、「目的」とするか/実態をともなわない「成長と分配の好循環」/知識社会のインフラストラクチュアとしての教育/人間が人間として成長するための「学び直し」/対人社会サービスの充実と地方自治体の役割/協力原理で下から民主主義を積み上げる
第4章 人間の未来に向けた税・社会保障の転換
──いま財政は何をすべきか
人間の生命活動を支える帰属所得/「社会保険国家」から「社会サービス国家」へ/現金給付と現物給付の役割/「社会保険国家」となっている日本/現物給付の少ない日本/「全世代型社会保障」の光と影/現物給付なき高齢者福祉の悲劇/声なき声の民主主義/子どもたちが育ちたいと思う社会へ/租税負担の低い「小さすぎる政府」/低すぎる公的負担がもたらす苦しい生活/共同事業のための共同負担の必要性/「小さな政府」の逆進性/資本に軽く、労働に重いという「逆差別性」/富裕税の創設を/利益原則にもとづく消費課税/「大きな政府」の逆進性、「小さな政府」の累進性/「事後的再分配」から「事前的再分配」へ/国民による財政のコントロールが困難な日本/財政民主主義を機能させる「三つの政府体系」
第5章 人間らしく生きられる社会へ
──地域の協働と民主主義の再生へ
太った豚になるよりも、痩せたソクラテスになれ/「量」の経済から「質」の経済へ/地域社会から存在欲求を充実させる/崩れ落ちる地域共同体/持続可能な都市の創造──地域の生活機能の再生から/「環境」と「文化」を取り戻すストラスブール/「公園のような都市」づくり──ドイツ・ルール地方/経済指標から社会指標へ/大正デモクラシーの教訓/信州で芽生えた国民教育運動/民主主義の活性化に向けた自治体の役割/巨大な富の支配と民主主義の危機/グラス・ルーツでの対抗とポピュリズムの台頭/形骸化した民主主義を再創造するために
おわりに──人間を人間として充実させるヴィジョンを描くために
あとがき
主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

87
現在の日本財政の分析にかけては、著者は第一人者だと私は思っています。この著書は新書にしてはもったいないくらいの内容が詰まっているように感じました。ほかの国との比較を行いながら日本財政についての提案をされています。戦後改革のシャウプ勧告から最近のピケティの分析なども引用しながらで納得いく感じがしました。2024/04/03

壱萬弐仟縁

60
図書カード500円を補助として活用し購入。やはり、ネオリベラリズムが社会を壊した。人間が手段ではなく、目的となる社会を再創造せねばなるまい。そして、そのための財政学や政治経済学を神野先生が提起されている。人間のための経済、ウェルビーイングの経済の参考文献もあり、今は目が不自由となってしまった神野先生の財政学総結集とみるべき作品である。再三再四読み直しておきたい。2024/03/01

道楽モン

22
次々と出版される「新自由主義批判から新たな地平への民主主義提言」の流れだが、現実は政権与党の暴走→民主主義に対する冒涜すら止められない日本国民。著者の専門は財政学で、内閣審議会などで主に地方行政への提言も行っている。学会では重鎮として君臨し、政権に近い立ち位置も取れ、役人からの信頼も厚く影響力もあるが、その思想はまったく政策に反映されていないとしか思えない。古典財政学から宇沢弘文、ピケティまでの膨大な知見を駆使した本著作は、理想的かつ本来の民主主義を提言する名著。著作の理想と現実の乖離が、絶望の大きさだ。2024/04/24

Francis

15
財政学者の井手英策さんがFBでこの本を勧めていたので「ベーシックサービス」を読了後、購入して読んだ。井手さんの言葉に偽りなし。井手さんはFBで度々師匠の神野先生の事を敬意を込めて言及されるのだが、その理由が良く分かった。神野先生はこの本で井手さんと同様に北欧の社会民主主義の理念を分かりやすく解きほぐして伝えている。北欧の高福祉・高負担の社会民主主義が様々な困難を乗り越えて生き延びてきているのか。それは国民自らが考えながら実践する民主主義にある事が良く理解できる。2024/04/21

Koji Harasawa

8
著者の研究者としての矜持を文面から感じ、新書なのに感動しながら読み、学ばせてもらった。財政が持つ意味は、今歪められてしまっているのではないだろうか。それがコロナ禍で明るみに出たのに忘れられようとしている。本当の意味での経済や財政・政治とはなんのためにあるのかを根源的に示してくれた力作。民主主義をきちんと自分たちの手足で実験していくこと。誰かに頼るのではなく、そうやってもがいていくことが何より大事だと得心した。基礎自治体としての取り組みにこそ新しい社会の萌芽があるという指摘に、地方政治家として背筋が伸びた。2024/03/23

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